宮城のニュース

<南極見聞録>発電機2基が生命線

転がる太陽。極夜直前の太陽の動きを連続撮影して合成しました。この日は約1時間しか太陽が出ていませんでした。昭和基地では5月31日から7月12日まで太陽の上らない極夜という期間に入っており、太陽光発電はしばらくお休みになります(筆者撮影)
真夜中、昭和基地の裏の丘から見た基地の主要部です。右側の赤い建物、発電棟の中に発電機があります。中央の丸い屋根のある建物が隊長室、通信室、食堂、医務室などのある管理棟です(筆者撮影)

 第58次南極地域観測隊に仙台市太白区の外科医大江洋文さん(57)が参加している。過酷な環境の中で任務に励む日々。極地の「今」を伝える。

◎こちら越冬隊 Dr.大江(7)電気事情

 国内にいれば蛇口をひねれば水が出てきますし、トイレで用を足した後はレバーを動かせば流れていきます。ボタンを押せば電気機器はすぐに使えますし、ダイヤルを回せばガスの火も瞬時につきます。昭和基地ではこのような当たり前のことをそれぞれ設営系の専門の隊員が1日も欠かさずに管理運営しています。
 読者の多くがお住まいの東北地方は、6年前に大震災に襲われ、この当たり前の日常の大切さを痛感した方も多いと思います。今回は基地の電気事情をお伝えします。

<効率よく再利用>
 基地の心臓部、発電棟には240キロワットの大型ディーゼル発電機が2基あり、交代で保守点検しながら基地の電力を支えています。観測機器の中には大量に電力を消費するものもあるため、この発電量は一般家庭で使用する電力の400軒分にも相当するそうです。
 電源がストップしてしまえば、基地は4時間で凍り付くといわれており、まさに生命線ともいえる設備です。発電機の安定した運転や整備のために、発電機のメーカーの社員も隊員として毎年参加しています。
 ここで生み出された電気は、観測を支えるだけではなく、エンジン冷却水や排ガスの熱を使って造水や温水暖房、浴槽水加温の熱源として再利用されます。燃料の持つエネルギーの75%が回収される効率のよい運用になっています。

<太陽 風力も活用>
 燃料は発電機だけでなく車両や航空機、一部の暖房にも使用され、毎年、観測船しらせが運んでくる物資重量全体の約6割を占めています。このほかに、太陽光発電や風力発電も積極的に運用されており、将来的には昭和基地の電力の12%を自然エネルギーでまかなうという計画になっています。観測機器の多様化や生活習慣の変化で電力需要量は増加傾向にあることから、隊員は常に節電を心がけています。
 時々質問を受ける原子力については、1960年代から70年代初頭にかけて、アメリカのマクマード基地で原子力発電が運用されていました。しかし、格納容器の火災や冷却水漏れなどで管理に手間がかかり、採算が合わないとの理由で、運用予定期間の半分で施設は撤去されたそうです。それ以降、現在に至るまで南極に原発はありません。(第58次南極越冬隊員・医師 大江洋文)


関連ページ: 宮城 社会

2017年11月21日火曜日


先頭に戻る