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<311次世代塾>第10回講座 三つのテーマを「考える」

「障害を理解することが障害者支援の第一歩」と呼び掛けた阿部助教の講義

 東日本大震災で起きたことに向き合う通年講座「311『伝える/備える』次世代塾」の第10回講座が、仙台市宮城野区の東北福祉大仙台駅東口キャンパスで18日あった。復旧期を扱う第2フェーズの最終回「考える」。「インフラの復旧・復興」「障害者支援の課題」「通信と安否確認」の各テーマについて、東北地方整備局総括防災調整官の一戸欣也さん(56)、東北福祉大助教の阿部利江さん(35)、NTTドコモ東北支社ネットワーク部長の岩越学さん(48)の証言と訴えを聴いた。

◎備えだけでは不十分/東北地方整備局総括防災調整官 一戸欣也さん(56)

 けが人を搬送するにも物資を被災地に運び入れるにも、道路や港湾などインフラの復旧が欠かせない。津波がれきの撤去では、各地の地元建設会社が危険を顧みず先頭に立った。
 復旧工事では用地の地主が見つからなかったり、土地の境界が定まらなかったりと困難が続いた。労働者不足や資材高騰で工事入札の不調・不落も相次ぎ、急ぎたくても急げなかった。
 復興まちづくりの合意形成にも丁寧な説明が重要で、時間と人手を要する。「早さ」とは相反することも心得ておきたい。
 被災自治体などは今なお平時の何倍もの仕事量で、全国から応援職員の派遣を受けている。しかし、それも減少傾向。送り出す側に余力がない事情もある。
 振り返れば、備えたことしか役に立たなかった。そして、備えていただけでは十分ではなかった。インフラの復旧・復興には難しい問題が多くあることを理解してもらいたい。

◎障害に応じた支援を/東北福祉大助教 阿部利江さん(35)

 法律上の障害者の定義が拡大され、従来の身体、知的、精神の各障害のほかに発達障害、内部障害がある人も加わった。それぞれの障害に応じたサポートをすることが重要だ。
 震災時、障害者は「避難所に居場所がなかった」と考える人が多く、ストレスで大声を上げる子や食事、トイレに苦労する人たちがいた。「避難所に行けなかった」との訴えもあった。当事者の体験を共有し、支援の在り方を考えたい。
 地域の防災活動に障害者が参加する割合は低く、理由の一つとして「連絡が来ない」との声がある。受け身の姿勢がうかがえるが、2015年に仙台で開かれた国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組」により、初めて障害者も防災・減災を担う関係者と位置付けられた。
 防災の推進に向け、障害者が声を上げて「受援力」を高めることが求められるし、私たちも「自分事」と捉えて関わっていきたい。

◎複数手段で情報収集/NTTドコモ東北支社ネットワーク部長 岩越学さん(48)

 地震による停電や津波による設備被害で震災後、多くの携帯電話がつながらなくなった。安否確認などの通話も殺到し、回線は輻輳(ふくそう)。メールもサーバーがパンパンになり遅延した。
 避難所などで携帯電話や充電器を貸し出した。復旧を急ぎ、約1カ月で携帯はほぼ使えるようにした。
 教訓を踏まえ、停電でもつながるように基地局のバッテリーを強化し、全国を貫く伝送路も多ルート化。全管理職が防災士の資格を取り、自治体や自衛隊と連携した訓練も重ねている。
 震災時、5%に過ぎなかったスマートフォンの普及が進んだ。連絡手段としてだけでなく、情報収集のツールとして定着したが、万能ではない。災害時はテレビやラジオなどあらゆる方法を駆使し、正確な情報を得てもらいたい。
 まずは災害用アプリを使ってほしい。特に災害伝言板は安否確認に有効。通話が減れば本当に必要なSOSがつながり、命が救える。

◎受講生の声

<災害伝言板使う>
 震災は山形県高畠町の自宅で経験しました。仙台市に住んでいた兄と連絡が取れず不安でした。通話やネット回線の混雑に左右されにくい災害用伝言板の有用性を学びました。すぐに災害用アプリを取得して備えます。(仙台市青葉区・東北福祉大3年・21歳)

<まず実態を知る>
 特別支援教育を学んでいる関係もあり、障害者支援の講義が印象的でした。障害者の気持ちや困難は、まず障害の実態を知らないと想像さえできない。今回の学びを教育者になって生かせるように考え続けます。(仙台市青葉区・宮城教育大3年・21歳)

<遅れの背景知る>
 復旧・復興に多くの時間を要する理由を学びました。遅いという批判は耳にしても背景までは知らず、考えさせられました。遅れに対する不満が過度に広がらないためにも、「急げない理由」はもっと知られていいと思いました。(仙台市太白区・会社員・22歳)

[メモ]「次世代塾」は、河北新報社などが震災の伝承と防災啓発の担い手育成を目指して企画した年15回の無料講座。次回は12月16日。連絡先は同社防災・教育室=メールjisedai@po.kahoku.co.jp
 運営する311次世代塾推進協議会の構成団体は次の通り。河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工業大、宮城学院女子大、尚絅学院大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構


2017年11月25日土曜日


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