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<南極見聞録>巣作り巡る争い 熾烈

この営巣地には200羽近いペンギンがひしめきあっていました。手前のペンギンは巣作りの最中です。目の白い輪は白目ではなく、メジロなどの野鳥と同様に目の周りの皮膚が白くなっているもので、目を閉じると白い線になります(筆者撮影)
巣作りのための石を積んだところです。ペンギンの舌と上あごにはとげがついていて飲み込んだオキアミや魚などの餌を逃がさないしくみになっています。寒い所で暮らすのでくちばしの先端近くまで毛に覆われています(筆者撮影)

 第58次南極地域観測隊に仙台市太白区の外科医大江洋文さん(57)が参加している。過酷な環境の中で任務に励む日々。極地の「今」を伝える。

◎こちら越冬隊 Dr.大江(16)ペンギンセンサス

 日本の観測隊のペンギン研究の歴史は古く、昭和基地では1961年の第5次隊から調査が始まりました。センサスとはもともとは人口調査や国勢調査の意味ですが、11月中旬と12月初旬の2回に分けてペンギンの数を数える調査があります。

<基地周辺に2種>
 1回目は繁殖のため営巣地に集まった成鳥の数を数え、2回目は卵を抱いている巣の数を数えます。これらのデータは長期的な気候変動、毎年の海氷状況、人間の漁業活動などの影響を受けて変動すると考えられており、観測されたデータは南極で観測する各国の研究プログラムの一環として、毎年、国際会議に報告されることになっている重要な調査でもあります。
 日本人はペンギン好きの国民と言われています。動物園や水族館でこれほど多くのペンギンを見られる国はほかにはないでしょう。世界には17種類(分類の仕方によっては18種)のペンギンがいて、本来いないはずの北半球の日本には11種が飼育されているそうです。
 南極大陸で繁殖するのはコウテイ、アデリーの2種類だけで、昭和基地周辺ではそのどちらも見ることができます。
 アデリーペンギンは、冬の間は、北の比較的温かい海で暮らし、春から夏にかけて昭和基地周辺の島や大陸の露岩帯に来て繁殖する中型のペンギンです。鉄道会社のキャラクターに使われているのを見たことのある読者も多いでしょう。水はけをよくするために小石を集めて巣を作り、その上に通常2個の卵を産んで子育てをします。

<小石1400個を収集>
 ある隊員が数えたところ、一つの巣の石の数は約1400個もあったそうです。見かけによらず気性が荒く、できるだけ条件のいい巣を作るための場所や石を巡る争いは熾烈(しれつ)で、けたたましい叫び声をあげてのけんかは珍しくなく、流血した個体を見ることさえあります。くちばしでつつかれたり、丈夫なフリッパー(翼)でたたかれたりした隊員もいたそうです。
 先日、ペンギンセンサスに出掛けました。この時期の昭和基地では次の隊を迎える準備で除雪作業に大忙しなのですが、ふだん扱うスコップや重機を双眼鏡とカウンターに持ち替えて、愛らしい姿を観測することで、いい気分転換ができました。
(第58次南極越冬隊員・医師 大江洋文)


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2017年11月25日土曜日


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