宮城のニュース

<仙台いやすこ歩き>(70)地ビール/深い苦み う〜んうまい

 「仙台初らしいの」と画伯の目がキラリッ。「地ビールというか、クラフトビールというか…」
 それはすごい、誰がいつ、どこで、と盛り上がったところで今回のテーマは決まった。小規模醸造で造っている地元のビール「穀町エール」を訪ねることに。仙台市若林区穀町は、藩制時代、穀物問屋が置かれた地区。ビールといえば大麦、穀町とはゆかり深し、だ。
 迷いながら行くと、穀町郵便局の近くにシックな建物。看板などは出ていないが、「何かそれっぽいね」と近づくと、立ち話をしている男性。「穀町エールの今野さんですか」と尋ねると、ご近所さんと思われるおかあさんが「そうよ、この人よ」と教えてくれる。
 案内されて入るとすぐカウンター。早速座って、穀町ビール代表の今野高広さん(48)に話を伺う。ビール造りのきっかけは30代の頃、仕事で行ったベルギーで、ベルギービールに出合ったことだそうだ。2000種あるといわれるベルギービールの豊かな味に引かれ、「ベルギービール屋さんをやりたいと思ったんです」
 当初は輸入したものを飲ませる店を考えていたが、ベルギービールは高価。少しでも安く提供したい、だったら造ったらどうかと思い立ち、ビール造りの講座を受けに東京へ通った。
 この頃から、夢はベルギービールのようなビールの醸造へ。そして今野さんは次なる行動へ。穀町からほど近い荒町の老舗酒蔵・森民酒造に就職して、何と杜氏の修行を始めたのである。「講座で学んだのはビールの設計や理論。醸造の現場を知りたかったんです」
 その中で一番大事だと思ったのは、清潔を保つこと。それが雑味のない、おいしいビールにつながるそう。森民酒造の杜氏として、この秋は4回目の仕込みに入り、一方で、同蔵の了承も得て、7月から「穀町エール」の仕込みも開始。今野さんは、午前中は森民酒造で日本酒造り、午後はビール造りというダブル醸造家なのだ。
 この場所を選んだのは、この地域で生まれたことと、森民酒造と同じように広瀬川の伏流水を将来的に使いたいから、と話す。ビールは醸造工程の初期で使用する仕込み水が大きく影響するのだという。
 「幅広い人に楽しんでもらいたくて」地元でお披露目会を開くという穀町エールを、何とその5日前に試飲させていただけることに。そう、ここは出来たてのビールを味わえる醸造所兼バーでもあるのだ。
 「何と!」と飲む前からいやすこ2人はうれしさで頬が緩む。美しいグラスにシュワーッと注がれた液体は普通のビールより濃く、ミルクチョコのよう。最初はフルーティー、次にこくを感じ、さらに飲むとうまい苦味が口に広がる。「チョコレートの苦味みたい」と画伯。こんなビールは初めて。
 「思い描いていた味に近いんです。小さな醸造所だからできる、新しいビールを手間暇かけて造っていきたいです」と今野さん。お披露目の日、瓶詰めされた穀町ビールを買いに行った。老若男女が次々にやってくる。まさに仙台初の地ビールの始動。帰って乾杯しようっと!

◎60種類以上多彩な醸造法

 ビールの誕生は5000〜6000年前といわれる。古代文明の発祥地の一つ、メソポタミア地方からは紀元前3000年当時のビール造りの様子を刻んだ粘土板が出土。エジプトでも紀元前2374年に即位したナウス王のピラミッドの墳墓に、ビール醸造の様子が描かれている。
 現在世界中で造られているビールは多彩で、スタイルは60種以上だが、上面発酵酵母によるエール、下面発酵酵母によるラガー、その他に大別される。エールはイギリスやベルギーのビールに多く、ラガーはドイツやチェコをはじめ世界各国に普及。日本の大手メーカーはほぼラガースタイルだ。ちなみにラガーとは貯蔵の意。
 1999年、日本ではそれまで年間2000キロリットルの醸造が必要だったビール醸造免許が、60キロリットルに引き下げられ、小規模醸造が可能となった。これにより全国各地に生まれた地ビールは、作り手が工程全てに関わって手作りする作品に似ていることから、クラフトビールとも呼ばれている。

◇   ◇

 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


2017年11月27日月曜日


先頭に戻る