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<原発被災地の行方>耕作地拡大へ農家連携 新技術活用 効率化模索も

紅梅夢ファームの稲刈り作業。予想以上の収穫となった=10月1日、南相馬市小高区(写真の一部を加工しています)

 東京電力福島第1原発事故に見舞われた福島の被災地で、営農再開に向けた取り組みが進んでいる。住民避難による農家減少や根強い風評被害など、立ちはだかる壁は高い。大地の恵みを取り戻そうと奮闘する現場を追った。(福島第1原発事故取材班)

◎福島 実り再び(上)担い手確保

 限られたマンパワーでどう農地活用を図るか。導いた答えは「連携」だった。
 南相馬市小高区の生産法人「紅梅夢(こうばいゆめ)ファーム」。区内七つの営農組織が出資して今年1月に設立した。自前の作業員と農機具を抱え、今年は地域から委託を受けた9ヘクタールに主食用のコメを作付けした。
 小高区は原発事故で一時全域が避難区域となった。避難指示は昨年7月に解除されたものの、現状の帰還率は3割に届かない。
 原発事故前、区内では約880戸が1200ヘクタール以上で稲作を営んでいた。「戻った住民の多くは高齢者。営農組織が力を合わせなければ、耕作放棄地の拡大は防げない」。社長の佐藤良一さん(63)が話す。

<来春2人を採用>
 周辺は、津波浸水地を中心に水田を大型化する整備計画が進む。だが、肝心の担い手確保に頭を悩める地域は少なくない。
 「将来、法人の受託面積を250ヘクタール程度に広げたい」と佐藤さん。来春2人の高校新卒を採用するなど、さらなる大型化に備えた態勢づくりを急ぐ。
 原発事故は、福島県浜通りの農家減と高齢化を一気に加速させた。担い手への期待は高まるが、水路維持やあぜ道の除草など稲作には労力を伴う。広大な土地の集約は容易ではない。
 独自に全住民が避難した福島県広野町。浜通りの中では比較的早く、2013年度に稲作を本格再開させた。本年度の作付面積が原発事故前の8割程度まで回復した一方、生産者は3分の1に減った。
 現在、認定農業者による作付面積は全体の64%。原発事故前の17%から急伸した。町内で24ヘクタールを作付けする横田和希さん(37)は「面積は既に以前の3倍。さらなる拡大は難しい。一緒にできる人材も簡単に見つからない」と言う。

<「将来像を提示」>
 農業再生には作業の効率化が欠かせなくなっている。福島では、新技術の普及や技術革新に活路を探る動きが本格化する。
 その一つが乾いた水田に直接種をまく「乾田直播」。別の田んぼで行う田植えと組み合わせることで、集中する春の作業を分散できる。「浜通りでは普及の必要性が高い」として、農研機構東北農業研究センターや福島県がセミナーなどを通して浸透に努める。
 大学も新たな営農モデルを模索する。東北大は本年度、福島県葛尾村の旧避難区域内に実証農地を整備。センサーやカメラといったICT(情報通信技術)を活用し、新技術の開発に挑む考えだ。
 主導する東北大大学院農学研究科・東北復興農学センターの大村道明助教は「原発被災地では従来の農業は成り立たない。将来を見据えた営農のコンセプトを示したい」と力を込めた。


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2017年11月28日火曜日


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