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<原発被災地の行方>加工向け 畑作物に活路 人手確保や機械化が課題

貸し出された収穫機でサツマイモを掘り出す渡部さん(右)=1日、福島県楢葉町

 東京電力福島第1原発事故に見舞われた福島の被災地で、営農再開に向けた取り組みが進んでいる。住民避難による農家減少や根強い風評被害など、立ちはだかる壁は高い。大地の恵みを取り戻そうと奮闘する現場を追った。(福島第1原発事故取材班)

◎福島 実り再び(中)産地形成

 担い手不足が続く福島県浜通り地方で、新たな畑作物の産地化へ模索が始まった。ポイントは機械化と加工業務用の需要だ。
 今月上旬、福島県楢葉町の畑を収穫機が走り、サツマイモを次々と掘り起こした。
 東京電力福島第1原発事故に伴う町の避難指示は2015年9月に解除された。16年春に帰還した渡部昇さん(59)は今年初めてサツマイモを約1.3ヘクタールで栽培した。
 事故前は酪農が中心だった。「サツマイモの6次産業化に可能性を感じる。夏の日照不足などで収量は目標を下回ったが、課題も分かった」と手応えを語る。
 町は収穫機などを導入して貸し出し、生産を後押しする。被災地の営農再開支援を考えていた菓子製造の白ハト食品工業(大阪府)と協定を結び、売り先も確保した。

<タマネギも拡大>
 「サツマイモは作業の機械化が可能。スイーツや焼酎など加工できる分野も広い」と町の担当者。農業復興の柱に位置付け、栽培面積の拡大を図る考えだ。
 ただ、苗の植え付けや収穫などには人手が必要。今年は東電社員らが協力したが、産地化には持続可能な体制構築が欠かせない。
 タマネギにも注目が集まる。福島県は16年度から相馬双葉地方で普及に力を注ぐ。かつて出荷用はほぼ栽培されていなかった。それが17年度収穫分は6.3ヘクタール、18年度は10ヘクタールを超える。
 収穫期が九州、北海道といった主産地の端境期に当たり、売り込みやすい。放射性セシウムなどの吸収率が低く、鳥獣の食害に遭いにくい利点もある。
 永田行直さん(65)は昨冬、福島県浪江町で栽培に着手。避難先の相馬市から通い、約1.5トンを農協経由で加工業者に出荷できた。
 集落一帯は今年3月に避難指示が解除された。戻った世帯は1割に満たない。担い手不足で水路の維持も難しく、稲作は断念。タマネギに将来を託した。

<カレー開発計画>
 出荷時の皮むき、根の切断…。選別も含め、北海道などでは機械化されている作業の効率化が課題だ。
 永田さんは「本格的に拡大するなら、町や農協が主体となった機械化の支援が求められる」と指摘する。
 産地で付加価値を高める試みも動きだした。
 南相馬市に昨年移り住み、タマネギ栽培を始めた豊田雅夫さん(45)は、地元産を活用したカレーの開発を目指す。市内のホテルのシェフと連携し、レシピを来春完成させる考えだ。
 北海道などで栽培の修行を積んだ。耕作面積5〜6ヘクタールを将来、20ヘクタール以上に拡大する計画を立てる。
 カレーはご飯を土手に見立てて円形に盛り、真ん中にルーを流し込んで提供する想定。題して「野馬土手カレー」。かつて相馬藩が馬の放牧地に整備した土手の名称を拝借した。「地元業者と連携してイベント会場などで提供したい」と力を込める。


2017年11月29日水曜日


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