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<脱埋没への模索 どうする登米・栗原>第1部 産業経済(6完)工業振興/市域越えた連携大事

新工場の建設が進む宮城県栗原市の築館インター工業団地

 のどかな田園地帯に工場建設のつち音が響く。宮城県栗原市築館、若柳の両工業団地。基幹産業の農業に埋没し、かつて工業の後進地とされた地域が近年、企業進出ラッシュに沸いている。
 宮城、岩手両県の中間にある立地を「東北のへそ」と銘打ち、物流効率の良さをPRする戦略が当たった。これまでトヨタ自動車東日本(大衡村)への部品納入関連など17社を誘致。将来の雇用数は全体で1000人規模になる見通しだ。

<アクセス抜群>
 「高速道や新幹線駅と近く、仙台や岩手中部にある工業団地へのアクセスが抜群にいい。今後も立地数は伸びる」。栗原市内に新工場を建設中の自動車部品等製造大手の幹部は言い切る。
 企業誘致が好調な栗原市の陰に隠れているが、登米市の工業も堅調だ。弱電関連や精密機器分野などの企業が下支えし、2005〜14年の製造品出荷額は平均で栗原の1.32倍に当たる約1325億円に上る。
 企業誘致件数は14社。自動車関連が栗原に集まりつつある現状を踏まえ、地場産の農作物を使った食品加工分野に狙いを定める。登米市の担当者は「車関連は栗原に完敗した。別分野で挽回したい」と意気込む。
 両市にはさらなる成長を見込める好材料もある。登米、栗原を結び、三陸道と接続する20年度完成予定の「みやぎ県北高速幹線道路」(全長24キロ)だ。交通環境の整備により、関連企業が集まるという期待もある。

<中小は人材難>
 ただ、企業誘致による工業振興の足元には共通の不安材料が横たわる。採用競争が激化し、若手を雇用できない地元中小の活力が低下するとの懸念だ。
 栗原の金属材料製造分野の有効求人倍率はこの1年、平均4倍超で推移。工業系学科を有する高校のある登米でさえ2.1倍を超える。ある登米市議は「中小企業から『若い人がほしい』と頼られるが、何ともならない」と嘆く。
 「2時間半の企業説明会で、うちに来たのは2人。大手はいっぱい並んでいたが…」と吐露するのは、栗原市の中小企業の工場長。「企業は新陳代謝しないと新鮮な発想が失われる。10年後が怖い」と頭を抱える。
 識者は現状をどう見るか。東北大大学院経済学研究科の大滝精一教授は「都市間、企業間競争でなく、圏域や企業規模にとらわれない有機的な連携こそが大事になる」と指摘する。
 キーワードは「相乗効果」。アイデアとして(1)大手から作業効率化のノウハウを吸収し、人手不足に対応(2)地域資源や既存産業の能力を引き出す産学官連携による仕組みの構築(3)市域、県域を越えた企業間の協力態勢強化−などを挙げる。
 大滝教授は「どの圏域でどんな企業集団ができるのかを考えるべく、市域を越えて中長期的なビジョンを立てるのもいい。その先に両市、各企業にとってウィンウィンの関係が見えてくる」と提言する。
(登米支局・本多秀行、若柳支局・横山寛、栗原支局・土屋聡史)


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2017年11月30日木曜日


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