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<北朝鮮木造船>日本海沿岸の住民、不安と怒り交錯「あの程度の船では簡単にひっくり返る、漂着続くのでは」

鶴岡市五十川の海岸に漂着した木造船。船体にはハングルのような文字と数字が記されていた=11月29日

 日本海沿岸で、北朝鮮籍の漁船と推測される木造船の漂流・漂着が相次いでいる。日本の排他的経済水域(EEZ)内で違法操業した揚げ句、船体のトラブルなどから日本側に打ち寄せられたとみられる。両国間で進展が見られない拉致問題を背景に、北朝鮮側の凶行を警戒する地元では不安と怒り、困惑が交錯する。
 日頃は平穏な秋田県由利本荘市の港町に緊張が走ったのは11月23日深夜。同市石脇の「本荘マリーナ」付近の防波堤に木造船が漂着した。乗っていた成人男性8人は「北朝鮮から漁に出たが、船が故障した」と説明、秋田県警に保護された。
 26日には男鹿市の宮沢海水浴場に木造船が漂着し、翌日に一部白骨化した男性8人の遺体が見つかった。

<不安>
 第2管区海上保安本部(宮城県塩釜市)によると、青森、秋田、山形の3県で今年、確認した朝鮮半島からとみられる木造船漂流・漂着数は28日現在で15件。うち、11月の実数は11件に上る。
 山形県鶴岡市五十川(いらがわ)の海岸に、21日に漂着した木造船の第一発見者となった漁業佐藤清八郎さん(66)は「沖に浮いた船を見つけた瞬間、(日本海中央の)大和堆(やまとたい)で操業する北朝鮮の密漁船だと思った」と指摘。「食料の確保に必死なのだろうが、しけ続きの日本海であの程度の船では簡単にひっくり返る。不審船の漂着はしばらく続くだろう」と話した。
 度重なる木造船の漂着は、11月中旬に日本海に迫った低気圧による荒天で難破し、日本海沿岸に流れ着いたとの見方が出ている。
 山形県漁協によると、中型イカ釣り船の山形船団は11月に入り、北海道礼文島の南南西沖にある武蔵堆から大和堆に向けて南下した。付近では木造船を含む300〜400の密漁船をレーダーで確認。操業は困難と判断し、武蔵堆に引き返したという。

<怒り>
 これらの話を裏付ける品々が、秋田県に漂着した木造船から見つかった。県警などによると、由利本荘の船でイカ釣り漁に使う集魚灯が、男鹿の船からは漁網や北朝鮮の10ウォン札などが発見されたという。
 各船内からスパイ工作や脱北をうかがわせる物証は確認されていないが、由利本荘の船が一時、行方不明になる騒ぎがあり、いらぬ不安をあおる格好に。木造船の捜索に協力した地元の男性(61)は「8人の他にも乗員がいて、既に上陸している可能性もある」と警戒する。

<困惑>
 県民の心情を代弁した佐竹敬久知事は27日の定例記者会見で「漁船なのかスパイ船なのか、船を調べれば痕跡がある。調査の機会を逃し、住民に不安を与えた」と県警に苦言を呈した。
 青森県内では今年、5隻の木造船など7件の漂流・漂着が確認された。青森海上保安部によると、全ての船体に赤い字で複数桁の数字が書かれていたのが共通点。大破した状態だった1件を除き、判別不明の文字も確認された。
 20日、26日と立て続けに木造船が漂着した同県深浦町の50代の男性漁協職員は「漁のさなかに出くわしたら不気味だし、不安に感じる漁師もいると思うが、密漁と違って対策の打ちようがない」と戸惑う。


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2017年12月01日金曜日


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