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<東北の本棚>歌に詠まれた背景探る

埋もれ木に花が咲く

◎埋もれ木に花が咲く 松浦丹次郎 著

 「仙台埋木細工」は青葉山の亜炭鉱山などから出土した500万年前の木々を利用し、江戸時代後期に始まったとされる。これに対し、名取川で産する「名取川埋もれ木」は川底などに数百年から数千年埋没した後に見つかる木々を指し、その名が知れ渡ったのは仙台埋木細工より1000年も古い。本書は、これらが生まれた歴史や背景などを新説を含めて紹介している。
 古来名取川は埋もれ木の名所として知られ、平安時代以降、京の人々の歌にも多く詠まれた。世に知られる意味の「名取」と、「埋もれ木」の言葉が内包するイメージが正反対で、忍び会う恋や出世に埋もれた心情を表すのに都合が良かったらしい。
 燃やしてできる赤い灰は香炉での火持ちが良く、室町時代に梁川城主伊達成宗が埋もれ木に添えて都人に献上して人気に火が付いた。仙台藩4代藩主伊達綱村、5代吉村の時代には埋もれ木製の文台(ぶんだい)が作られ、伊達家や公家らが詠んだ記念の歌集が完成するなどいかに珍重されたかが分かる。
 仙台埋木細工に関しては、これまでは仙台藩の足軽が1822年に創作したのが始まりとされてきた。しかし20年には仙台藩の女流作家只野真葛(まくず)が戯作者滝沢馬琴に自著の添削願のあいさつとしてそのしおりを贈っており、通説より前に仙台埋木細工があった可能性が読み取れるという。
 幅広い文化史的な視点から埋もれ木の新たな実像が浮かび上がる。実際に埋もれ木を採集し、灰を作るなどしながら史実に迫ろうとする著者の熱意が説得力を増す。
 著者は1951年生まれ。旧福島県保原町役場を経て伊達市役所を2009年退職。福島県史学会会員。伊達市在住。
 土龍舎024(577)6431=1944円。


2017年12月03日日曜日


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