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<葡萄美酒 風土を醸す>人、文化、産業…地域つなぐ新たな風に

【写真】仙台秋保醸造所のブドウ畑で寺田さん(右端)の説明を聞くセミナーの参加者ら。左から3人目が毛利さん=10月、仙台市太白区

 自らブドウ畑を耕し、畑近くに醸造所を構える本格的なワイナリーが増えている。ワインは中国・唐時代の詩人王翰(おうかん)が「葡萄美酒 夜光杯」とうたったように古今東西で醸され、その土地土地で愛されてきた。東北の風土に根差すワイン造りの現場と、東北に影響を与えたワイナリーを訪ねた。(報道部・菊間深哉)

◎(中)仙台秋保醸造所(仙台市太白区)

 「ブドウが育つには何が必要か。もちろん、光や水、空気。だが米国では『ハート』と教える」
 仙台市太白区の仙台秋保醸造所で10月にあったワイナリー育成セミナー。世界的なワイン産地の米国カリフォルニア州ナパなどで経験を積んだブドウ栽培家、寺田雄一郎さん(61)が講義し、参加者約20人にエールを送った。

<情報交換の場に>
 醸造所が毎月1回開くセミナーには、宮城県や山形県でワイナリー開業を目指す人たちが集まる。
 朝日町ワイン(山形県朝日町)で約20年間、主に醸造を担い、上山市でワイナリー設立を計画する鈴木智晃さん(40)は「志を同じくする仲間と知り合い、情報交換できる場があるのは心強い」と話す。
 醸造所は、これから施設を構える鈴木さんのようなワイン生産者の醸造を受託したり、全国的に不足するブドウの苗木を調達し譲ったりして、事業を軌道に乗せる支援もしている。
 「ワインで人や地域、文化、産業をつなぎ、育む」
 代表の毛利親房さん(49)が脱サラして、秋保にワイナリーを開いたのは2015年。東日本大震災で被災した東北の復興のため、社会貢献を主目的とした起業だった。
 2.1ヘクタールの自社の畑でブドウ7000本を育て、現在は1500本(750ミリリットル)のワインを醸造。将来は1万5000本の生産を目指す。さらには地域のさまざまな業種と協業し、なりわい再生やにぎわいづくりに取り組む。

<他業種とも連携>
 醸造所には幅広い活動の成果となる独自商品が並ぶ。ワインの澱(おり)に漬けたベーコンや豚肉のシードル煮は地元のソーセージ店などと共同開発した。地域の工芸家らとタッグを組み、たんす職人によるワインスタンドやガラス作家のデキャンタ(容器)も生み出した。
 毛利さんはいま、各地に誕生するワイナリーが連携した広域型ワインツーリズムの青写真を描く。本年度中に東北の食文化を紹介するウェブサイトを作り、ワイナリーと漁港を巡る旅行プランといったコンテンツを充実させていく考え。いずれは旅行商品を販売したいという。
 「ワインは畑の風土を映し出すからこそ、地域の他業種と連携すれば付加価値を高めやすい。旬の三陸の海産物とワインを組み合わせてゆっくり食事を楽しむ旅は、最高に豊かな時間の過ごし方になる」
 秋保のブドウ畑から、毛利さんは新たな風を吹き渡らせようとしている。


2017年12月06日水曜日


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