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「青い目の人形」平和問う 戦争と震災乗り越え76年 陸前高田できょうから展示

戦争と震災を乗り越えた青い目の人形「スマダニエル・ヘンドレン」(岩手県立博物館提供)

 太平洋戦争の開戦から76年となる8日、陸前高田市気仙小に保管されてきた「青い目の人形」が、同市で公開展示される。戦時中は軍部の焼却命令をかいくぐり、東日本大震災の津波から生還した人形が、平和の尊さを語り掛ける。

 人形「スマダニエル・ヘンドレン」は、気仙小の女性教員で2013年に103歳で亡くなった故菊池謙さんが守り通した。老後、短歌に託して当時の状況を記録していた。
 焼却命令を受け、とっさに学校の階段を駆け上がって暗い物置に人形を隠したという。<探したる人形抱きしかの一瞬昭和二年の子らの瞳光りき><非国民のそしり覚悟で戦時下にアメリカ人形抱きし日ありき>
 人形を「平和の使者」と表現した菊池さん。親類の女性は「『人形に罪はねえもの。かわいいと喜ぶ子どもたちの顔が浮かんだ』と言っていました」と振り返る。
 近年は校長室の金庫に保管されていたが、2011年の震災の津波で流された。当時の校長が全壊した校舎の裏で金庫を発見。重機でこじ開けると、木箱に入っていた人形も土砂と海水にまみれていた。
 岩手県立博物館が補修を買って出て、エタノール水溶液で塩を抜いたり、カビを除去するなど現在も作業が続いている。劣化した人形を水で拭くと状態が悪化する恐れがあるという。
 津波では菊池さんの自宅も流された。地域の惨状に心を痛める一方、人形が無事だと知って安心していたという。
 菊池さんは生前の04年、校長室で人形と対面した。変わらぬほほ笑みを喜び、こう詠んだ。<いとおしき曽孫(ひまご)とばかり抱きたり温(ぬく)もり通うヘンドレンちゃん>
 教え子の佐々木栄さん(86)=陸前高田市=は「先生は、大事なものだから後世に残したいと言っていた。人形を通じて平和の尊さを感じてほしい」と話す。

 青い目の人形は、岩手県が返礼に贈った日本人形「ミス岩手」(米アラバマ州バーミングハム公立図書館収蔵)と共に、陸前高田市コミュニティホールに展示される。10日まで。

[青い目の人形]日米友好を目的に1927(昭和2)年、米国から全国に約1万2000体が贈られた。岩手県内には少なくとも263体あったが太平洋戦争中に「敵国の人形」として処分され、現存が確認されるのは18体にとどまる。


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2017年12月08日金曜日


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