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<東北の本棚>武士道と命 本源を問う

火 みちのく一関忠臣蔵 小野寺苓 著

 元禄時代、主君のあだ討ちを果たした赤穂義士の行動は武士の鑑(かがみ)=「忠臣蔵」として語り継がれる。しかしそれを美談とばかり受け止めて良いのか。武士道とは何か、奥羽の小藩・一関藩の江戸藩邸を舞台に、女性作家の視点から「命の重み、命の本源とは何か」を問う。
 物語を語るのは、江戸詰の奉行や物頭(足軽の束ね役)クラスの藩士。3万石の一関藩だが事件当時、幕府と諸藩との取り次ぎなどをする「奏者番」という重要な役割を務めていた。
 赤穂藩主・浅野内匠頭が江戸城内で吉良上野介を切り付けた。連絡を受け、その日のうちに罪人のように庭の上で切腹させるよう幕府から命令が下った。「足軽は何人必要か」「刀の準備は」。あれこれ考える時間などなかった。身柄を引き取り、裃(かみしも)を着せる。内匠頭は人形のように無表情。弁明の機会すら与えられない。藩邸の前庭で、生臭い血が飛び散った。
 47人の義士の中に、一関藩士縁戚の赤穂藩士が1人いた。物語の後半は、その藩士の足跡をたどる。自分はどう生きるべきか、妻と幼い子を持ちながら、悩んだ末に「わしは侍の道を選ぶ。殿への恩返しはこの道しかない」と家族に告げた。離縁を迫られた妻は「この子を泣かせてまで…、それは何の道ですか」と問い返す。だが、ついには切腹の命。
 あだ討ちは果たしても、結果として家族は引き裂かれた。「切腹が武士道であり、美学のようにたたえることの愚かさよ」と問い掛ける。題名にある「火」。「火」は、暗いときには明かりとなるが、近づき過ぎるとやけどしてしまう。物事には、常に両面があるという意味を込めた。命を生み、育てる女性の感覚から「忠臣蔵」を読み解いた作品だ。
 著者は1932年東京生まれ、一関市に住む。北川れいの筆名で、詩人としても活躍する。日本現代詩人会員。
 勝どき書房03(3536)5552=2160円。


2017年12月10日日曜日


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