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<大崎耕土 世界農業遺産認定>共生の産物(下)/多様性 付加価値生む

水をためた田んぼに集まるハクチョウやマガン。「ふゆみずたんぼ」は古くて新しい農法だ=大崎市田尻

<「中継基地」に>
 国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産に認定された大崎耕土には、農家の屋敷林「居久根(いぐね)」が多く存在する。大崎市など5市町などでつくる大崎地域世界農業遺産推進協議会によると、居久根のある家は認定地域内の約4割に当たる2万4300戸に上る。
 居久根は暴風や浸水を防ぎ、食料を確保する場として農家の暮らしを支えてきた。最近、水田地帯の生物多様性にも貢献してきたことが分かってきた。
 昨年度実施した大崎市の調査によると、斑点米の原因となるカメムシなどの水稲害虫を捕食するアシナガグモは、居久根に近いほど数が多かった。害虫の天敵となるカエルやトンボが生息できる居久根は、良好な稲作と生物多様性を共存させる「中継基地」の役割も担っているようだ。
 地域内では、渡り鳥と共生する古くて新しい農法も広まってきている。「ふゆみずたんぼ」だ。

<平均価格2倍>
 大崎市田尻の「蕪栗沼・周辺水田」は2005年、ラムサール条約に湿地登録された。水田の湿地登録は異例で、渡り鳥の飛来地にもなる冬期湛水田のふゆみずたんぼの取り組みが登録を後押しした。
 ふゆみずたんぼは、日本有数のマガンの飛来地でマガンが休める場所の確保が目的だった。それが、農薬や化学肥料に頼らない米作りを生んだ。
 冬の水張りによる生き物の働きで土が軟らかな「トロトロ層」になり、雑草の発芽を抑え、稲の生育に必要な養分が蓄えられる。江戸時代、福島県会津地方で行われていた記録がある。
 「元々は渡り鳥ファーストの農法。無農薬のリスクもあって、最初は不安だらけだった」と振り返るのは、蕪栗沼に隣接する伸萠(しんぽう)地区の「伸萠ふゆみずたんぼ生産組合」の事務局長を務める西沢誠弘さん(63)。
 03年に栽培を開始し、組合員は10人。今年は約10ヘクタール作付けした。区画整理で20年度には約20ヘクタールに集積された「沼のような」ふゆみずたんぼが出現する計画だ。
 収量は少なく、冬の水管理や草取りの労力もかかる。それでも今、平均で60キロ2万2000円程度と通常の2倍近い価格で流通している。安全と安心に「渡り鳥のロマン」も重ねた付加価値を、消費者が支えてくれている。
 世界農業遺産の認定可否を審査するFAOの世界農業遺産科学助言グループのスリム・ゼクリ氏は、10月の大崎耕土の現地調査でこんな言葉を残した。
 「農薬に頼らない農業をよみがえらせ、そのコメに付加価値が付き、付加価値が持続可能性につながっている。世界で認識されていくべきものだ」


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2017年12月14日木曜日


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