宮城のニュース

<南極見聞録>ガザの中学生と交信

画面には真剣な顔の生徒たちが映っています。その気持ちに応えようと一生懸命話しかけました(葛西尚隊員撮影)
白夜入り前の満月。北半球とはさかさまのウサギが見えます。手前は基地から約1キロ離れた岩島、バックに南極大陸のスカイラインも見えます(筆者撮影)

 第58次南極地域観測隊に仙台市太白区の外科医大江洋文さん(57)が参加している。過酷な環境の中で任務に励む日々。極地の「今」を伝える。

◎こちら越冬隊 Dr.大江(17)衛星教室

 南極観測隊が昭和基地でどんなことをしているのか。主に学校や研究機関に向けて、テレビ電話や衛星回線を通じて基地の様子を伝える「南極教室」という行事があります。
 先日、パレスチナのガザ地区の中学生向けに、この南極教室が開催されました。これは国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)から依頼を受けて、第57次隊で初めて開催され、今回が2回目になります。

<外の世界知らず>
 ほぼ英語での講演をガザの中学校の英語の先生がアラビア語で補足します。こちらの英語があやふやになると、現地の日本人スタッフが日本語で助け舟を出してくれるという複雑な方法で行われました。
 折しもアメリカがエルサレムをイスラエルの首都に承認するというニュースがあった直後でした。アラブとイスラエルの対立が激化する中、パレスチナの学校は一時、全て休校になり開催も危ぶまれるような状況でした。
 しかし、現地スタッフや先生たちの熱意で開催にこぎつけ、回線が乱れて音声や画像が何度も止まるという困難がありながらも、無事に終えることができました。
 生徒たちは生まれてから3度の戦争を経験し、ガザの中に幽閉されて外の世界を知ることが難しい、まさに「戦争しか知らないこどもたち」(同名の書籍が日本人スタッフにより出版されています)です。何とか親しみを感じてもらおうと日本とパレスチナの旗を貼り付けたり、ペンギンのフィギュアをたくさん並べたりして基地側の会場の医務室を飾り付けました。

<質問 次から次へ>
 講演後の質問コーナーでは「日本の観測隊の最近の成果は?」という専門的なものや「なぜ行こうと思ったのか?」「故郷が恋しくならないか?」など、国内の子供たちから尋ねられるのと同様なものから「男女の役割に差があるのか」のように社会状況の違いを感じさせるものまで多岐にわたりました。予定時間を過ぎても次々と手が上がり、つたない英語で答えるのがもどかしいくらいでした。
 終了後、子供たちにメールで「教育だけが貧困や争いに打ち勝つことができて、平和と進歩への確実な道になります。これからも学び続けてください。皆さんが健やかに成長していつか日本や南極に来ることを願っています」とメッセージを送りました。
(第58次南極越冬隊員・医師 大江洋文)


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2017年12月16日土曜日


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