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<食味に懸ける 山形米戦略’17>第2部(中)連携/磨いた技術 外食が呼応

水田の地層標本を手にする高橋さん。作土の深さが自慢だ

 2018年産からのコメの生産調整(減反)廃止を見据え、食味の良さを前面に出して生き残りを懸ける山形県の生産現場は、生産者や地域の農協がそれぞれ販売力を高めつつある。こうした動きは、県主導のブランド戦略と並び、産地のイメージや情報発信に大きな影響力を持ち始めている。個々の消費者から外食産業、大手商社まで。顧客獲得に向けた現場の挑戦を追った。(山形総局・宮崎伸一)

 現在の「コメ余り」と言われる状況は、生産調整(減反)廃止で深刻化するとの見方が一般的だ。今年の主食用米需要量(生産数量目標)は735万トン。少子高齢化などで、10年前に比べ約93万トン減っている。

<二人三脚で拡大>
 山形県真室川町の高橋直樹さん(45)は、それでも主食用で伸びが期待できる分野に懸ける。単身世帯や共働き世帯の増加を背景に需要が伸びている外食、中食向けの業務用米だ。
 大手外食チェーンと本格的に取引を始めて15年。今では地元の生産者約30人が加わり、作った分だけ買い取ってもらう契約を結び、はえぬきやコシヒカリ、ひとめぼれなど年間300トンを納入する。
 「今年は天候不順の影響で収穫量が1割減った。収入減にはなるが、品質を落とすわけにはいかない」と高橋さん。外食チェーンとの信頼関係を大切にする。
 外食チェーンの創業者が高橋さんのコメ作りを理解し、高橋さんも会社の要求に技術で応え、二人三脚で取引を拡大してきた経緯があるからだ。
 稲作と合わせて和牛肥育も営む高橋さんの自慢は、有機農業を実践してきた父剛(つよし)さん(75)と20年にわたって取り組んできた牛ふん堆肥による土作りだ。作土の深さは、周辺の水田の2倍近い30センチに上る。
 外食チェーンの創業者は剛さんの講演を聞いたことがきっかけで、何度も視察に訪れて稲作の現場を学んだ。高橋さんも当初は「外食チェーンが使うのは価格の安い外国産米」と思い込んでいたが、食の安全・安心を重視する創業者の姿勢に共感するようになった。
 本格的に取引を始めるのに当たり、両者は化学肥料を使わないことや含有タンパク質の上限を定めるなど独自の基準を設定。今ではグループの全国約340店舗で1年間使用する約6000トンのコメのうち、2割を山形県産が占める。

<安全もアピール>
 コメ余りが叫ばれる一方で、この数年は中食・外食業者が求める価格帯のコメが不足する状況が続いている。2014年産の大幅な米価下落を受け、政府は飼料米への転作を強化。主食用は各産地が家庭向け高級ブランド米の作付けに力を入れるようになり、結果的に業務用に適した中間的な価格帯のコメが手に入りにくくなっているという。
 外食産業にとって生産者との直接契約は必要量を確保できるだけでなく、消費者に対し素性が確かで安全な食材を使用しているとアピールできる利点がある。
 高橋さんも「苦労はあっても、コメの価値を理解してくれる相手と取引したい。正当に評価されることが生産者の意欲につながる」と話す。
 コメ専門誌「月刊食糧ジャーナル」の鶴田裕編集部長は「規模拡大が進み、直接契約で業務用米を栽培する生産者は増えている」と分析。「今後は食味の優れたトップブランド米と、業務用などの多収穫米の複合栽培で農業経営を安定させる方向に向かうのではないか」と予測する。


関連ページ: 山形 経済

2017年12月17日日曜日


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