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<東北の本棚>世界を変える水たまり

◎パドルの子 虻川枕 著

 中学2年の耕太郎は旧校舎で、屋上にできた水たまりで泳ぐ美少女、水原と出会う。水たまりに潜る「パドル」をすると、世界を変えられると聞き、耕太郎も「パドル」をする。親友三輪君の存在や三輪君と水原の関係など、文中に仕掛けられた数々の伏線が切ない結末へとつながっていく。最後に全ての謎が解けるとすがすがしい気分になる青春ファンタジー小説。著者は仙台市出身。本著でポプラ社小説新人賞受賞し、デビューした。
 耕太郎が初めて「パドル」したとき、水原は「ささいな違和感も見過ごさないこと」と書き置きを残す。耕太郎が感じた違和感は、公衆電話から釣り銭が出たこと。耕太郎は「パドル」中に自分が思い描いたシステムだったことを思い出す。「世界を変えたい、と強く想(おも)う気持ちが無いと、水たまりは呼応しない」と水原は解説した。
 海の巨大な水源、車のない社会、校庭の世界樹…。耕太郎のいる世界の現象は、水原や三輪君が「パドル」によって変えてきた世界だった。毎日授業をサボってまで変えなければならない世界。その裏にある真実が三輪君の口から明かされる。そして、耕太郎も水原の秘密に気付く。
 一方で、「パドル」で全ての世界が良い方向に転がっているわけではなかったことに気付いた水原は「こんな水たまり、なかったことにしちゃいましょ」と提案し…。
 耕太郎の水原への恋心、思春期の心の揺れなど、ファンタジーの中にもリアルな中学生が描かれ、生き生きとした青春が凝縮されている。
 著者は日大芸術学部映画学科脚本コース卒。東京都在住。
 ポプラ社03(3357)2212=1512円。


2017年12月17日日曜日


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