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<回顧17みやぎ>(5)汚染廃 試験焼却年内見送り/容易でない不安払拭

汚染廃棄物の圏域処理で合意した市町村長会議。県が目指す試験焼却の一斉開始は、先行きが不透明になっている=7月15日、県庁

 東日本大震災から7度目の年越しを迎える。復興へと地道な歩みを重ねた2017年。被災地を置き去りにした解散風が吹き、大型選挙が相次いだ。学校現場では再び尊い命が失われ、問題の根深さが浮き彫りとなった。県内であった出来事を記者が振り返る。

 またしても住民合意の壁が立ちはだかった。
 東京電力福島第1原発事故に伴う放射性物質に汚染された国の基準(1キログラム当たり8000ベクレル)以下の廃棄物処理で、県が予定していた試験焼却の年内開始が見送られた。
 県内にある約3万6000トンの汚染廃棄物を巡り、県と県内35市町村は7月の市町村長会議で、保管自治体が地元圏域ごとに個別処理する方針で合意した。積年の懸案は、ようやく動きだすかと思われた。
 焼却を予定する広域行政事務組合や自治体は今秋にも、地元施設で県内一斉に試験焼却を始める計画だったが、焼却灰を埋め立てる最終処分場の周辺住民を中心に反発は根強かった。大崎市や石巻市は、年内の関連予算の計上を見送った。
 合意からわずか半年足らずで試験焼却を実施する方針については、当初から危ぶむ声もあった。
 7月の会議で、相沢清一美里町長は「住民には不信感が残っている。(試験焼却開始の)期限を決めると、丁寧に説明する時間がなくなる」と指摘。村井嘉浩知事は「いつ開始するか分からないと、(廃棄物の)搬入・搬出業者にも迷惑が掛かる」と退けた。
 懸念は的中した。県は廃棄物を保管する農家の負担に配慮し、早期処理を目指すが、急げば急ぐほど逃げ水のように解決への道のりは遠のいていく。
 現在の状況は、国の基準を超える指定廃棄物の問題とも重なる。処理を担う国に県は早期解決を促したが、最終処分場の建設候補地になった加美町などの猛反対に遭い、計画は棚上げになったままだ。
 放射性物質に対する不安の払拭(ふっしょく)は、たやすいことではない。指定廃問題の混乱が残した大きな教訓だったはずだが、住民とのすれ違いは繰り返されつつある。
 住民と向き合う自治体は板挟みを余儀なくされている。石巻市は11月に計6回の住民説明会を開催。今月も意見交換会を続け、焼却処理を進めようと努める。
 事態収束を急ぐには、じっくり時間をかけて理解を得るしかない。拙速からはいい結果が生まれないことを、改めて認識すべきではないか。(報道部・馬場崇)

[メ モ]汚染廃の圏域処理では、焼却を予定する広域行政事務組合や自治体が地元の施設で処理する一方、堆肥化や土壌へのすき込みといった方法も認めた。大崎、石巻、黒川、仙南の4事務組合が焼却を予定。栗原市や登米市は堆肥化やすき込みの実証実験を進めている。


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2017年12月18日月曜日


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