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<食味に懸ける 山形米戦略’17>第2部(下)直販/高値目標 農家の刺激に

新米が積まれた庄内みどり農協の倉庫。集荷したコメの6割以上を直接販売する=10月下旬、酒田市漆曽根

 2018年産からのコメの生産調整(減反)廃止を見据え、食味の良さを前面に出して生き残りを懸ける山形県の生産現場は、生産者や地域の農協がそれぞれ販売力を高めつつある。こうした動きは、県主導のブランド戦略と並び、産地のイメージや情報発信に大きな影響力を持ち始めている。個々の消費者から外食産業、大手商社まで。顧客獲得に向けた現場の挑戦を追った。(山形総局・宮崎伸一)

 「生産調整(減反)の廃止で今後、農家経営は不確実性が増していく。少しでも所得を上げるためには直接販売(直販)が重要になる」と力を込めるのは、庄内みどり農協(酒田市)の若木吉尚米穀課長。

<所得向上後押し> 
 同農協は1994年、酒田・飽海地区の8農協が合併して誕生した。山形県産米の1割を産出する全国有数規模の単位農協だ。年間収量3万8000トンのうち65%に当たる約2万5000トンをコメ卸大手などに直販し、残る35%を全農県本部に販売委託している。
 個々の生産者が消費者や外食ビジネスと直接結び付いて販売力を高めようとする流れは、地域の単位農協でも強まっている。国内最大の集荷団体・全農を擁する農協グループの在り方にも大きく影響しそうだ。
 各地の単位農協は90年代に一気に進んだ広域合併のスケールメリットで、大手の商社や米穀卸と直接取引可能になった。
 「3万トンを超す量を委託販売するとなると、集荷業者に支払う販売手数料が億単位の額になる」と若木課長。「それがなくなるだけで農家の所得向上につなげられる」と直販に力を入れる理由を説明する。
 直販重視の姿勢は生産者にも好評だ。水田15ヘクタールでつや姫とはえぬきを栽培する酒田市の斎藤敏夫さん(65)は「全農より高値で販売してくれるのはありがたい」と歓迎。「複数の納品先があることで緊張関係が生まれ、適正取引になる。さらに高値で売れるよう、より食味の良いコメをつくりたい」と話す。

<集出荷先細りも> 
 一方、個々の生産者や単位農協が販売チャンネルを広げた結果、全農の集荷率は過去10年間で全国で4割から3割程度に低下した。
 特に山形県産米は高級ブランド米として定着したつや姫の成功などで評価が高まっている。個々の農家や単位農協がより高値で販売できるチャンスが広がっただけに、共同計算方式よる農協グループの系統出荷は先細りの懸念が強まる。
 山形県農協中央会の今田(こんた)裕幸常務理事は「直販で利益が出ている以上、全農を通してくれとは言えない」と前置きした上で「ただ、全ての農家が個々の工夫で『ポスト減反』の時代を生き残れるわけではない。普通の農家の生産物を適正価格で流通させる役割に終わりはない」と語る。
 それぞれの地域に根差しつつ全国を網羅する集出荷体制は今もコメの価格や供給の安定に加え、不良業者の排除などでも産地と生産者を守り続けている。
 食味の良さで山形県産米のブランド価値を高める戦略は、販売形態の違いを乗り越え全ての生産者、流通関係者にとって共通の利益となる数少ない選択肢でもある。

[共同計算方式]生産者の委託を受け農協がコメなど農産物を集めて一括出荷し、一定期間内の平均価格で組合員に精算する方式。コメの場合、秋の出荷時に農家は一時金(概算金)を受け取った後、1年間かけて精算する。生産者が個々に品質を高める工夫をしても価格差が出ないため、意欲的な農家の間には不満の声もある。


関連ページ: 山形 経済

2017年12月18日月曜日


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