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<回顧17みやぎ>(6)仙台地裁切り付け事件/開かれた司法に課題

切り付け事件が起きた仙台地裁。負傷した警察官2人が救急搬送された=6月16日

 東日本大震災から7度目の年越しを迎える。復興へと地道な歩みを重ねた2017年。被災地を置き去りにした解散風が吹き、大型選挙が相次いだ。学校現場では再び尊い命が失われ、問題の根深さが浮き彫りとなった。県内であった出来事を記者が振り返る。

 「でたらめ裁判だ!」。異様な絶叫が聞こえ、仙台地裁の4階から3階306法廷に駆け付けると、暴れる被告の男(31)を傍聴人らが必死に取り押さえていた。
 法廷の入り口に飛び散る鮮血。顔や背中から血を流し、肩で息をしながら倒れたままの男性2人。ただ事でないのは、すぐに分かった。
 事件は6月16日午前10時15分ごろに起きた。当時保釈中だった被告は、判決公判の法廷に複数の刃物を持ち込み、制圧しようとした警察官2人に切り付けたとされる。入廷前に所持品検査はなかった。
 最前列で傍聴していた男性は「被告は入廷直後から落ち着かない様子だった」と振り返る。刃物を入れた上着のポケットに何度も手を出し入れし、異変を感じた裁判官から「(判決を)聞いていますか」と注意される場面もあったという。
 事件発生時、地裁1階には法廷見学の小学生約20人がいた。もし、被告が刃物を手にしたまま逃走していたら。想像するだけで背筋が寒くなる。
 法廷で起きた前代未聞の凶行は、法に基づいて犯罪を処罰する刑事司法手続きを暴力で否定する行為に他ならない。「これは司法制度への挑戦ですよ」。取材した捜査関係者の言葉に、行為の悪質さへの強い憤りを感じた。
 事件後、最高裁は所持品検査の積極的な実施を全国の地・高裁に通達。仙台地裁は保釈中や在宅起訴の被告全員に法廷前での所持品検査をするようになった。仙台高裁は来年1月、ゲート式の金属探知機を裁判所の出入り口に設置する。
 事件から4日後、所持品検査は物々しい雰囲気の中で始まった。再発防止を考えれば致し方ないが、窮屈さを感じるのも確かだ。法曹関係者の間では、過剰な検査強化が被告のプライバシー侵害につながりかねないとの懸念も広がる。
 裁判員制度の導入で、法廷は市民に身近な存在となりつつある。流れに水を差すような事件を踏まえ、安全確保と「開かれた司法」をどう両立させるのか。裁判所の試行錯誤の行方を見極めたい。(報道部・横山勲)

[メモ]県迷惑防止条例違反(盗撮)の罪に問われた山形市の無職淀川聖司被告(31)が仙台地裁での判決公判中に刃物を振り回し、警察官2人の顔や背中を刃物で切り付けたとして殺人未遂罪などで起訴された。地裁の裁判員裁判で今後審理される。


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2017年12月19日火曜日


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