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<回顧17みやぎ>(7)色麻町・一斉放送事業破綻/苦渋の有線本卦帰り

デジタル無線網の基地局アンテナが立つ町役場と放送室、全世帯への配備を目指した無線機のコラージュ

 東日本大震災から7度目の年越しを迎える。復興へと地道な歩みを重ねた2017年。被災地を置き去りにした解散風が吹き、大型選挙が相次いだ。学校現場では再び尊い命が失われ、問題の根深さが浮き彫りとなった。県内であった出来事を記者が振り返る。

 嫌な予感がした。新任地に着いて間もない4月、無線機を見た時だ。れんが大の黒い本体から、角のように2本飛び出たアンテナ。この武骨な機器が、住宅の居間や玄関に置かれた光景はイメージしづらかった。
 宮城県色麻町が全2000世帯分を1台約6万円弱で購入した。災害情報などを一斉放送するデジタル無線網事業。運用開始予定から2年たっても、約1200世帯で発生した受信トラブルを解消できずにいた。
 無線機のデザインより、問題の根は深かった。原因を調査した町の専門家委員会は4月末、「現状の設備で全世帯への一斉放送はできない」と結論付けた。
 周波数の帯域幅の不足など、設計上の致命的な課題が突き付けられた。事実上の事業破綻。巨額の公費が無駄になる可能性が高いと感じ、大きく報じた。
 その後の展開は、ほぼ予想通り。会計検査院は11月、無線機の購入費など約1億5000万円の支出を不法と指摘。町は事業に充てた国の交付金を返還した。設計業者は、追加工事分の委託料の支払いを求めて町を提訴。責任論争は法廷に場が移り、町民にとってもやもやした状況が当分の間、続きそうだ。
 意外だったのは、約6割の世帯が加入する有線放送電話(有線)を代替策に選んだこと。国内では役目を終えた前時代の技術とされる。故障しても代替機器がもう製造されていない、とも聞いていたからだ。
 ところが、町は通話機能のないスピーカーなら未加入の800世帯に設置が可能で、専門家委員会が提案したコミュニティーFMの開局より費用を抑えられると言う。予算や時間が限られる中、苦渋の本卦(ほんけ)帰りであることは分かるが、「だったら初めから…」と思わずにはいられなかった。
 町が有線の再整備方針を示した9月28日、役場2階の放送室に入った。前回改修から24年が経過。この先、いつ変調を来すか分からない。町職員は「写真はやめてね。汚くてかっこ悪いから」と声を掛けてきた。
 放送開始から60年目。県内で唯一残る有線は、誇るべきレガシーであり、事業破綻の教訓でもある。「もう少しの間、頑張ってよ」。そう念じ、シャッターを切った。(加美支局・佐藤理史)

[メモ] 色麻町は2011年から全国に先駆けて高速無線通信「地域WiMAX(ワイマックス)」網を整備。総事業費は約3億7000万円。13年に災害時の避難所となる40カ所との情報通信が可能となったが、全戸一斉放送はできなかった。有線放送電話は町の広報や町議会の中継が聞け、無料通話もできる。


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2017年12月20日水曜日


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