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<週刊せんだい>シニア世代の移動手段(3)出張販売車住民が誘致 買い物難民対策

遠距離の買い物が大変な高齢者を支える「クルリン号」=仙台市泉区
少量多品種で買い物しやすいクルリン号の店内
地域の世代間交流を育み、目配りの役目も果たすサロン
宅地へと変わる八木山南のスーパー跡地=仙台市太白区

◎荷台に商品500種類/出歩くきっかけに

 水曜の午前11時が近づくと、仙台市北部の高台住宅地におなじみの明るいメロディーが響き渡る。
 泉区の向陽台4丁目南公園にやって来たのは、フードマーケットフジサキ(泉区寺岡)の移動販売車「クルリン号」。3トントラックの荷台部分に精肉、野菜、果物、鮮魚、卵、調味料、パン、菓子など約500種類をそろえ、近所の高齢者ら30〜40人が利用する。
 向陽台1〜5丁目の人口は約5600。50年近く前に住み始めた働き盛りの世代は一斉に年を重ね、子ども世代は既に巣立った。高齢化率は4月現在で約31%に上る。

<近隣スーパー撤退>
1960〜70年代に開発された市内のベッドタウンは高齢化に伴い、車が使えなくなったり、足腰が衰えたりして買い物に苦労する住民が増えている。いわゆる「買い物難民」だ。向陽台にもあった身近なスーパーはロードサイドの大型店に押され、10年ほど前に姿を消した。
 クルリン号は、移動が難しい高齢者を支えようと、売り場が地域まで出向いていく。逆転の発想と言える。1月に発足した住民互助グループ「向陽台ささえ愛の会」が、買い物難民対策として7月に誘致した。
 毎週足を運ぶ主婦大和田茂子さん(75)は夫(80)と2人暮らし。「大型店への運転を担ってきた夫が今年初め、脳梗塞になり、途端に買い物が大変になった。定期的に来てもらえる安心感は大きい」と話す。
 「バスでスーパーに出掛けても、帰りの荷物が重いと疲れる。かといってあり合わせの材料で作れば、栄養が偏りがちになる」と、明かすのは常連の無職穴沢文恵さん(80)。「生鮮品をこの目で確かめながら選べるのがうれしい」とほほ笑む。
 クルリン号の隣には、ささえ愛の会が設けたテント張りのサロンがあり、買い物帰りの住民がおしゃべり。地域包括支援センターのスタッフもその場で多様な相談に応える。高齢者が外出し、少しの距離であっても歩くきっかけになっている。

<独自バスの構想も>
市南西部の太白区八木山南地区でも買い物難民問題が生じた。開発直後の74年から営業してきたスーパーが2015年秋に閉店。代わりに入ったスーパーも昨年秋に撤退した。危機感を抱いた地元の連合町内会などは社会福祉法人と連携し、高齢者の移動手段を高齢者が支える独自の買い物バス構想を描く。約2.5キロ離れた国道近くのスーパーを往復する案が浮かぶ。
 取り組みに関わる八木山南地区社会福祉協議会会長の会社経営阿部利美さん(69)はこう訴える。「外で買い物したり、会話したりする気晴らしは健康寿命を延ばす。互いに助け合う機運も高めると思う。自分もいずれは世話になるかもしれない」


[買い物難民]統一した定義はないが、スーパーの撤退や商店街の衰退などで、日常生活に必要な品を購入できる店が近隣になくなり困っている人を指す。移動手段が乏しいケースも多い。経済産業省による推計は2014年時点で全国に700万人程度とみる。既に1000万人を超えるとの指摘もある。「買い物弱者」とも呼ばれる。

[クルリン号]スーパーが遠い郊外の団地で買い物機会を提供する移動販売車。百貨店の藤崎(仙台市)がフードマーケットフジサキ(泉区寺岡)を拠点に運行する。2015年11月に泉区館で始まり、現在は平日の日中、鶴が丘、向陽台、山の寺、永和台(いずれも泉区)、東向陽台(富谷市)など計9カ所を曜日別に巡る。


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2017年12月21日木曜日


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