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<伝える〜被災地から>命と向き合う姿 次代へ

◎(中)つなぐ/結論ではなく、考え、悩み抜くことが大事

 東日本大震災で被災した東松島市で8月上旬、全国から集まった約70人の高校生が、防災や復興について真剣に語り合った。
 全国高校総合文化祭弁論部門の交流会でのやりとり。被災地の生徒は心のケアの大切さを訴えたり、家族の避難先を確認する重要性を挙げたりした。

<「何も知らない」>
 一方、災害がまだ起きていない「未災地」の生徒が素直に明かす。「何も結論が出なかった。防災について何も知らないから」
 特別参加した石巻高3年雁部那由多(なゆた)さん(18)が口を開いた。「結論が出なくていいんです。次の災害に備えて考え、悩み抜くことが大事だと思う。災害が起きたら同じように話し合い、街をつくり直さなければいけない」
 東松島市大曲小5年だった2011年3月11日。激しい揺れの後、避難する際に校舎の昇降口付近で、50代ぐらいの男性が黒い津波にさらわれていった。「おじさんの手をつかんだら、自分が助からない」。雁部さんはそう直感し、手を差し伸べることができなかった。
 震災の記憶を胸に閉じ込めたまま、小学校を巣立った。中学2年だった14年3月、地元であった震災関連シンポジウムに出席。高校生パネリストの発言に胸を打たれた。「自分が体験を話すのは、被災していない人にとって価値のある情報になると思うから。その人に何かがあったとき、同じような目に遭わなくて済む」
 その言葉を心に刻み、雁部さんは中学時代の仲間と共に語り部を続ける。

<「災間」を生きる>
 震災で東松島市は約1100人が犠牲となり、全世帯の約7割が被害を受けた。雁部さんは考える。「建物は直っても、誰もが心のどこかに傷を負っている。防災とは命と向き合うこと。災害と災害の間、いわば『災間』を生きる僕たちが次の世代に教えていかなければいけない」
 弁論部門の生徒実行委員長を務めた築館高3年新妻綺羅(きら)さん(18)は、交流会に雁部さんを招いた意図を話す。「雁部さんは、命が突然なくなる状況に直面し、じかに大きな悲しみを感じた。テレビや本では分からないことを全国の高校生に伝えてほしかった」
 新妻さんは内陸部の栗原市に住む。震災当時は地震で自宅が被害を受けたが、時が解決してくれた。
 大学へ進んだら、何らかの復興支援に携わりたい。災害はいつ起きるか分からない。そのとき、自分に何ができるのか、考え続けようと決めている。


2017年12月23日土曜日


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