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<リンゴ王国 青森から>加工品に力 就農応援も

弘前市内で行われたイベントでキモリのシードルを振る舞う高橋さん(左)=今月9日

◎未来の実(3)門戸広げる

 弘前市のリンゴ収穫体験施設「りんご公園」にある「弘前シードル工房kimori(キモリ)」。表面に傷が付いて商品価値が下がったリンゴから、年間約2万本(1本750ミリリットル)のシードルを製造している。原料の仕入れ先は市内の農家8軒だ。

<傷物処分に疑問>
 キモリを運営するのは、農家や会社役員ら22人で組織する「百姓堂本舗」。代表取締役の高橋哲史さん(44)が設立した。2008年の降ひょう被害の体験が契機だった。
 「『傷付き』というだけで、手間暇を掛けて育てたリンゴを埋めて処分することに疑問を感じた。栽培と同程度のコストで買い取れる仕組みを作りたかった」。高橋さんは振り返る。
 キモリ設立の目的はもう一つある。「市民のリンゴへの関心を高めたいから」
 高橋さんは17年前、母ユキさん(53歳で死去)の病気をきっかけに東京都内の会社を辞めて帰郷した。「就農するまでリンゴには全く関心がなかった。枝切りなど全てがうまくいかず、つまらないとしか思えなかった」
 後戻りできないという複雑な気持ちを抱きながら、試行錯誤を重ねる挑戦の日々。やりがいのある仕事だと少しずつ分かってきた。
 「青森のリンゴ販売額は年間1000億円以上。関連産業を含めれば、その経済効果は計り知れない。しかし、かつての自分もそうだったが、市民はリンゴの大切さに気付いていない」。高橋さんの言葉に危機感ともどかしさがにじむ。
 同社は市民らにリンゴに触れてもらう機会をつくろうと、農作業体験後のキャンプや公園内でのライブなどの催しを開いてきた。

<癒やしの農園に>
 共感の輪は広がる。青森県平内町出身の元団体職員須藤七星さん(35)は昨年から、同社取締役の笹谷哲人さん(44)の下で農作業を学びながら手伝う。「実家は農家ではないが、将来は農園を持ち、『癒やし』の空間をつくりたい」。須藤さんが思い描く未来像だ。
 高橋さんらは、就農を考える人たちが働きながら学べる農園を造成する準備も始めた。理由をこう語る。
 「リンゴ農家を目指す人たちを応援し、津軽の農園風景を守っていきたい」

[加工原料の処理実績]青森リンゴの出荷量の約23%が加工用に使われている。2015年産のリンゴ処理実績によると、89.1%が果汁、1.9%がシードルを含む果実酒に加工されている。青森県は、カットリンゴやアップルパイなどに使われる「プレザーブ」など、通常の加工用リンゴより高値で取引される「高品位加工リンゴ」の生産量増加も目指している。


関連ページ: 青森 経済

2017年12月23日土曜日


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