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<検証 さくら野仙台破綻>(下)終焉/不透明な人事 不信増幅 一等地の老舗 廃墟と化す

突然の破綻となったさくら野百貨店仙台店。多くの人が閉店の通知に見入った=2月27日、仙台市青葉区

<寝耳に水>
 2016年4月19日、さくら野百貨店仙台店(仙台市)の運営会社エマルシェ(同)の臨時株主総会が開かれ、新体制が発足した。
 社長をはじめ役員は、仙台店の土地と建物の8割を所有する「さくら野DEPT仙台合同会社」(東京)が推薦したとされる投資ファンド「東北リテールマネジメント」(同)の関係者でほぼ占められた。
 東北リテールは株主総会の2カ月ほど前に設立されたばかり。エマルシェに新社長として送り込まれた岡田英樹氏は米国在住だった。株主総会で一部社員とあいさつしただけで、以降は「誰も会ったことがない」(仙台店従業員)。
 現場の運営は仙台店の前身、丸光時代からの生え抜きである安藤俊店長(常務)が担ったが、突然の社長交代は取引先も寝耳に水だった。
 「社長は仙台にいないが問題はない。その件はあまり外部に触れ回らないでほしい」。ある取引先は、あいさつ回りに来た安藤氏から懇願されたという。

<閉店宣言>
 経営陣が変わっても業績改善の兆しはなかった。新体制の発足直前まで1階正面に入居していた主力テナントの大手アパレルが撤退。その後も目玉の店舗を入れることができなかった。
 国内大手家具販売の誘致に動いたものの、交渉はまとまらなかった。外資系も検討したが、20年までしかない賃貸借契約がネックとなり、話は進まなかった。
 エマルシェの幹部は「経費もシビアになり、営業や広告で新たな試みができなかった」と明かす。
 閉塞(へいそく)感が覆う中、追い打ちが掛かる。16年8月、別のビルオーナーが未払い賃料の支払いなどを求め、仙台地裁に提訴した。
 2カ月後の10月28日、大半の社員に公表されない人事が行われた。岡田氏が就任半年で社長を退任し、安藤氏が昇格。経営権は東北リテールが握ったままだった。安藤社長は就任直後の11月上旬、ビルオーナーら関係者に通知書を送った。
 「賃料訴訟の取り下げがなければ、17年5月末で建物の賃借契約を解除する」
 関係者によると、通知書にはこう書かれていた。条件付きとはいえ、17年5月末の閉店宣言だった。だが、老舗百貨店の余命は経営陣の想定より短かった。

<商標切れ>
 「さくら野」商標を無償で貸与してきたさくら野百貨店(青森市)が17年1月、エマルシェに4月末以降の商標使用を認めないと伝えた。経営方針が不透明で表に出ない東北リテール経営陣への不信が理由だ。
 訴訟の取り下げはなく、裁判は17年2月9日に結審。判決日は3月27日と決まった。
 エマルシェの元社員は「商標契約が切れる4月末が危機と考えていた」と振り返るが、そこまで持たなかった。2月26日夕、8階事務所に集まった従業員に、同社代理人が同日付の解雇と店舗閉鎖を通告。終焉(しゅうえん)を迎えた。
 仙台店が入った建物は現在、外壁の看板が取り外されたが、解体されるかどうかさえ決まっていない。路線価が60年連続東北トップの一等地に似つかわしくない廃虚がたたずむ。


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2017年12月24日日曜日


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