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<福島県産米>全量全袋検査 生産現場「再考を」 出荷遅れ負担も大きく

1袋ずつ検査機器に通す全量全袋検査=11月17日、白河市

 東京電力福島第1原発事故後、全量全袋を対象に続けてきた福島県産米の放射性物質濃度検査を巡り、県は2018年度以降の新たな方向性を17年度内に示す方針だ。国の基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を超えたコメは15年産からは全くなく、負担感など現行検査のマイナス面を指摘する声が高まる。見直しを求める生産現場を取材した。(福島総局・高橋一樹)

 白河市の山あいに広がる入方(いりかた)集落。農家27戸が参加する農事組合法人「入方ファーム」は10月上旬、コメ取引をまとめた。東京都の販売業者と直接取引する原発事故後初のケースだ。
 契約した12トンを出荷できたのは11月中旬。代表理事の有賀良雄さん(68)は「想定より1カ月近く遅れた」と説明する。
 出荷用の1トン入りの計12袋から玄米を1キロずつ抜き取り、市役所に送った。他の業者とも重なり、検査終了まで時間を要した。
 それ以外にも農協出荷や自家消費用など計650袋(1袋30キロ)を3日間かけて地元の検査場に運び、1袋ずつ検査した。
 新米シーズンの出荷遅れは店頭への影響が大きい。有賀さんは「東京の業者には理解してもらえたが迷惑を掛けた。納入時期が不安定になれば商機を逃しかねない」と懸念を示す。

<7割が知らず>
 県は本年度、検査に関する意見聴取を実施。県内の生産者(325個人・法人)の52%が「負担感がある」と答え、「労力」「時間」「運搬コスト」などを具体例に挙げた。一方、首都圏などの消費者2070人のうち「検査自体を知らない」との回答は約7割を占めた。
 入方ファームは農作業の共同化、稲の育苗ハウスでのトマト栽培といった効率化に取り組む。担い手不足で工夫を凝らす現場に検査の負担は決して軽くない。
 有賀さんは取引の過程で東京の業者から「全量を調べていると知らなかった。そんなに福島のコメは恐ろしいの?」と聞かれた。
 流通や消費現場に残る誤解に、有賀さんは「検査体制を周知してこなかったのが一番の問題。検査がなければ早く出荷でき、取引の幅も広がる」と語る。

<風評対策 疑問>
 風評対策としての効果を疑問視する生産者もいる。
 猪苗代町で県オリジナル米「天のつぶ」のブランド化を目指す土屋勇雄さん(57)は「もう『検査しているから安全』と言えばいい時期ではない」と主張。農産物生産工程管理の認証制度「GAP」の取得推奨などへの転換を説く。
 旧避難区域からも同様の声が上がる。川俣町山木屋地区の本田勝信さん(62)は「価格差解消のため、検査とは別の所に経費を充ててほしい」と求める。
 県は原発事故の被害が大きかった12市町村を除いて抽出など別の方法に切り替える方向で議論を進める。ただ「検査縮小」の言葉の独り歩きは新たな風評につながりかねない。大波恒昭水田畑作課長は「メッセージの出し方も含め丁寧に進める」と強調する。

[福島県産米の全量全袋検査] 福島県が12年産米から続ける。対象は自家消費米を含む全てのコメ。県内173カ所203台の検査機器で年間約1000万点を検査。経費は年間約60億円。このうち52億円は東電の賠償金で、残りは国の補助金で賄う。


2017年12月24日日曜日


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