宮城のニュース

<仙台いやすこ歩き>(72)チーズ/欧州食卓の漬物的存在

 「何年か前の自宅で開いた年忘れ会で、手土産に持って来てくれたチーズ、おいしかったのよ〜」と思い出してうっとりする画伯。残念、その時私はまだ画伯と出会っていなかった。聞けばそのチーズは、チーズ専門店で買い求めてきたもので、お店は青葉区上杉にあるらしい。
 それでは行ってみようと、いやすこは北風吹く街へ。あったあった、ちょうど青葉区役所の裏通りに、チーズとワインの店「オー ボン フェルマン」の看板。オーナーの足立武彦さん(58)が迎えてくれた。店内には届いたばかりの空輸便の段ボール、ショーケースには見慣れないチーズ。わくわくしてくる。
 お店を開いたのは2006年で、今年11年目。大学時代から食品に興味があった足立さんは、食品関係の会社に就職。「仕入れの仕事で生産者に会いに行くうち、さらに興味が深まっていきました」。日本の伝統食品に始まり、世界の伝統食品へ、そしておいしいチーズとの出合い。
 足立さんの探究心は名刺の肩書が物語っている。「シュヴァリエ・ド・タスト・フロマージュ」、訳すとフランスチーズ鑑評騎士。本場フランスでチーズのプロとして叙任されている。ワインについても詳しく、日本ソムリエ協会のシニアソムリエである。
 仙台でこの種の専門店は他にないのでは?と聞くと、東北まで広げてもなかなかないでしょう、とのこと。開店前は海外の生産地を訪ねる一方、日本の地方都市の専門店へも勉強に行ったそうだ。「今はチーズという半生ものを置いているので、遠くには行けませんね」とにっこり。
 チーズ初心者いやすこは、入門編を教えてもらう。「日本でチーズというとおしゃれなイメージですが、ヨーロッパではいつでも食卓にある漬物的存在なんですよ」と足立さん。ぐんと親しみが湧いてくる。種類も豊富で、ヤギのミルクで作ったヨーグルトのようなフレッシュなものから、長期熟成させたハードなものまである。
 それらの中で、年末年始の特別な食卓にお薦めなのは、「一つはモン・ドール。木の棚の上で熟成させたチーズ。モミの木の一種のエピセアの皮で包まれているんです」。秋・冬の季節限定のチーズだそう。「それと、生クリームを加えたガレ・ド・ラ・ロワール。これは季節を問わず人気です」。ロワール川の小石という意味だそうで、意味を知ると風景まで思い浮かび、さらに豊かな気分で味わえそうだ。
 「漬物にユズや削り節を添えるように、チーズにも蜂蜜、ジャム、ドライフルーツを添えます。カマンベールは北のノルマンディー産で、ここはリンゴの産地でもあり、リンゴとの相性は抜群です」。なんだか、チーズって楽しい。
 初めての人にお薦めという、フランス産ガレ・ド・ラ・ロワールと国産カマンベールを購入した2人は、早速、パン屋さんに寄ってフランスパンを買い、チーズと一緒にいただく。蜂蜜をつけてはおいしい、リンゴと一緒もおいしい、と目を見開いてにこにこ。次はどんなチーズを選んでもらおうか。

◎修道院が起源1000種類以上

 チーズは牛や羊、ヤギなどのミルクを発酵させて作る。その歴史は紀元前3000年代にさかのぼり、古代メソポタミア人が自然発生的に得られた凝乳を、すのこの上で脱水して食べていたことが発掘物から分かっている。現代のフレッシュチーズに近いものだったといわれる。
 ギリシャ、ローマ、そしてフランスへと伝わるが、多くのチーズは修道院を起源としている。チーズは大別してナチュラルチーズと、それを加熱して発酵を止め、長期保存を可能にしたプロセスチーズがある。
 ナチュラルチーズは熟成方法や風味から、フレッシュ、白カビ、ウォッシュ、シェーブル、青カビ、セミハード、ハードの7タイプに分けられる。チーズの種類はフランスだけでも、各地方・村の特産があり、細かくいえば1000種類以上あるとされる。
 栄養面ではタンパク質や脂質、カルシウム、ビタミンB群が豊富。また、うま味成分のグルタミン酸が、天然食品の中でコンブに次いで多い。

 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


2017年12月25日月曜日


先頭に戻る