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<ふるさと住民票>「人口奪い合い」転換を 中央学院大教授・福嶋浩彦氏に聞く

福嶋浩彦(ふくしま・ひろひこ)1956年鳥取県生まれ。筑波大除籍。95年に千葉県我孫子市長に初当選、3期12年。退任後は中央学院大教授、東京財団上席研究員。消費者庁長官を2010年8月から2年間務めた後、中央学院大教授に復帰。専門は地方自治。

 「ふるさと住民票」の狙いと意義を、政策シンクタンク「構想日本」理事で提案の中心メンバーの福嶋浩彦中央学院大教授に聞いた。

 東京電力福島第1原発事故で全村避難を強いられた福島県飯舘村の菅野典雄村長が、避難先と同村との二重住民票を認めるよう国に要望したが、法改正はならなかった。今回は、現行制度の中で先行して自治体が動こうと、ふるさと住民票を提案した。
 提案の背景にある人口減少は、被災地だけの問題ではない。団塊世代ジュニアが高齢化すると、子どもを産む世代そのものが大きく減る。子育て環境を改善して出生率を上げたとしても、日本全体の人口減は避けられない。
 それなのに安倍政権が打ち出した「地方創生」の下で、全国の自治体は人口の奪い合いに陥っている。わがまちの人口減を小さくしようと思えば、他のまちの人口減を大きくしなければならない。そんな競争の先に、自治体の未来はない。
 「右肩上がりの時代の社会の仕組みを維持するため人口減を食い止めよう」ではなく、「人口が減っても持続可能でみんなが幸せになれる仕組みに変えよう」へ発想を転換したい。多くの分野で、量の拡大でなく質を高めることが課題になる。
 自分が育った地域に愛着を持ち、できることがあれば貢献したいという人は多い。そんな思いを形にしたのがふるさと住民票で、関係人口に着目した。こうした人は外部の目から見た貴重な意見を寄せてくれ、まちづくりにプラスになる。
 住民と自治体の関わり方が多様になったことも背景にある。仕事で複数の自治体に居住する人、親の介護で複数の自治体を行き来する人…。一つの自治体に住民登録して税金を払い、サービスを受けるという「単線型の関係」では、こうした社会変化に対応できない。住民と自治体の「複線型の関係」が求められている。
 一人一人の思いから出発して合意を形成し、自らの責任で地域をつくるのが本来の自治。国の下請けではだめだ。ふるさと住民票の広がりが、人口奪い合いから抜け出し、住民や地域の必要性から出発する自治への突破口になればいい。

[ふるさと住民票]地方自治体が申請に基づき住民登録のない人を「ふるさと住民」と認め、住民票代わりに「ふるさと住民カード」を交付する制度。登録者には行事やイベントの情報を提供し、住民と同様に公共施設の利用を認める。行政計画のパブリックコメント(意見公募)に参加できる例もある。進学や就職で故郷を離れた出身者、地域外からの通勤・通学者、ふるさと納税の寄付者、地域に愛着がある観光客やファンが登録するケースが多い。人口が減少する中、地域外の人と結び付きを強め、コミュニティー維持や移住促進につなげる狙いがある。政策シンクタンク「構想日本」が2015年に提案し、現在までに全国5市町村が採り入れている。


2017年12月25日月曜日


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