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<ふるさと住民票>住民登録なしでも「住民」外とのつながりが地域の力に 

徳島県産の農産物が並ぶ店舗で、ふるさと住民カードを手にする井寺さん=東京都小金井市
香川県三木町が「ふるさと住民」に交付する3種類のカード

 「住民」のカタチが変わりつつある。きっかけの一つが、住民登録のない人を「住民」と認める「ふるさと住民票」の広がりだ。居住地でない地域とつながり、「2枚目の名刺」でコミュニティーに参画する。進学や就職で都会に出た人が故郷のまちづくりに関わったり、地域にほれ込んだ「ヨソモノ」が地域活性化のアイデアを出したりする。土地に縛られない新しい共同体が、縮小社会に立ち向かう地域を支える。

◎UIターンの呼び水に 徳島・勝浦町、佐那河内村

 徳島県勝浦町は今年8月、「ふるさと住民」の登録を始めた。登録者には町の広報紙を送り、多目的施設を住民と同料金で使えるようにした。町内の工場や専門学校などに町外から通勤、通学する若年層をターゲットに登録を呼び掛ける。
 人口約5400、高齢化率40%超の山あいの地域。人口が減っても年代構成は若返らせようと、若者の移住に力を入れる。町地方創生推進室の北内章広主事は「ふるさと住民の登録が、UIターンのきっかけになればいい」と期待する。
 隣接する佐那河内村(さなごうちそん)は、ふるさと住民票を3月に初めて発行した。11月末までに首都圏などの73人が取得。2019年度までに150人の登録を目指す。
 特典の一つが、パブリックコメント(意見公募)への参加だ。村の計画や施策に対し、ふるさと住民票登録者も意見や提案ができる。村住民税務課の角田(かどた)寛子主査は「人口2400の村。地域づくりに外部の視点は欠かせない」と言う。
 村は、一定の審査を経たふるさと住民票登録者を「地域おこし支援員」にする制度も設けた。支援員として村のPRに貢献する活動をすると、最大10万円を補助する場合がある。
 村出身で、東京都小金井市で徳島県産品を販売する「てのひらストア」を営む井寺喜香さん(46)は、第1号の支援員となった。徳島直送のスダチやミカンが並ぶ店舗を9月にオープンさせ、「マチと田舎の交流拠点」と銘打った。
 井寺さんは「都会と田舎の両方に関わるという価値観の広がりを感じる。ふるさと住民票は、そんなハイブリッドな生き方を支えるツールになる」と語る。

◎登録者、全国最多309人 香川・三木町

 香川県三木町も3月からふるさと住民票の発行を始めた。登録すると、5万冊所蔵の町図書館が利用できるほか、パブコメの参加資格も得られる。11月19日現在の登録者は全国最多の309人で、このうち県内在住者が約45%を占める。
 同町は県都・高松市のベッドタウン。香川大の農学部や医学部、付属病院があり、約3000人が町外から通勤・通学する。その数、人口の1割に相当する。
 「この方たちに、まちづくりに関わってほしいと思った」と理由を語る筒井敏行町長。手厚い子育て支援策が奏功し、若い世代の転入が増えており、通勤・通学者を含む「新住民」の声にアンテナを高くする。
 目標は年度内の1000人登録。ふるさと納税の寄付者にも狙いを定める。筒井町長は「『住む民』にとらわれる時代ではなくなった。一緒にまちづくりを考えるサポーターを全国につくり、地域コミュニティーを再生させたい」と話す。

[ふるさと住民票]地方自治体が申請に基づき住民登録のない人を「ふるさと住民」と認め、住民票代わりに「ふるさと住民カード」を交付する制度。登録者には行事やイベントの情報を提供し、住民と同様に公共施設の利用を認める。行政計画のパブリックコメント(意見公募)に参加できる例もある。進学や就職で故郷を離れた出身者、地域外からの通勤・通学者、ふるさと納税の寄付者、地域に愛着がある観光客やファンが登録するケースが多い。人口が減少する中、地域外の人と結び付きを強め、コミュニティー維持や移住促進につなげる狙いがある。政策シンクタンク「構想日本」が2015年に提案し、現在までに全国5市町村が採り入れている。


2017年12月25日月曜日


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