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<ふるさと息づく 岩手・大槌>(上)学びや/輝く思い出 そのままに

旧金沢小の校庭で談笑する佐野さん(右)と阿部さん

 岩手県大槌町金沢(かねざわ)地区の廃校で小さな小さな写真展が開かれたのは、秋の深まるころだった。過疎と高齢化が進む山あいに260人が訪れたあの日々から2カ月。静かに営みを刻む「ふるさと」金沢のいまを見詰めた。(釜石支局・東野滋)

 古ぼけた校舎の一角に温かい時間が流れた。
 11日間にわたって開かれた写真展「金澤未来の記憶」。最終日の11月3日、会場の旧金沢小に閉校した2009年3月当時の教員や子どもたちが集まった。
 「金沢を愛し、歴史と伝統を受け継ぐ。それが最終年のテーマでした」。金沢小最後の校長佐野容子さん(62)が振り返る。

<育む環境優先>
 少子化や校舎老朽化を背景に、町では07年度に学校再編の検討が本格化した。各地区で反対論が噴出する中、金沢の住民検討会は違っていた。
 父母の一人が「人数が少なく、やりたいこともやれない子どもたちのことを考えてくれ」と訴えたのだった。
 稲作体験やしめ縄作りなど地域と結び付いた校外活動で子どもたちは伸び伸び育つ。半面、スポーツ少年団の活動には常に制約が付きまとった。
 元PTA会長で町議の阿部義正さん(60)は「どんな環境が子どもたちの成長に望ましいのか。反対もあったが最終的に保護者の声を尊重し、閉校を受け入れた」と話す。
 佐野さんたち教員と児童15人の金沢小最後の1年を地域の人たちがもり立てた。運動会で披露する神楽と鹿子(しし)踊りの練習に中学生や高校生を含む多くの住民が駆け付け、秋の学習発表会には100人以上が詰め掛けた。
 閉校式で、ある教員は子どもたちへのメッセージを黒板にしたためた。住民手製の紅白の大福が配られ、盛大な式典で金沢小は133年の歴史を閉じた。
 09年春、佐野さんは統合先の大槌北小の校長になっていた。始業式前に旧金沢小から移った児童11人とステージに立ち、自分たちの「開校式」に臨んだ。
 「閉校を負い目に感じることはない。温かく支えてくれた金沢の人たちに応えるためにも、自慢の学校だったとの誇りを胸に歩んでほしかった」

<古いアルバム>
 黒板に記されたメッセージは、町教委職員がニスで固定して保存していた。今年になって町職員が発見。住民を巻き込んだ写真展が開かれる端緒となった。
 久々に母校を訪れた佐々木彩実さん(21)は閉校当時の6年生。「人数は少なくても地域の人たちに見守られ、仲良く過ごした6年間だった」と懐かしんだ。
 学びやは、巣立った約3000人がかけがえのない日々を思い出すよりどころとしてたたずむ。「学校全体が古いアルバムのよう」。佐野さんの言葉に、みんなが静かにうなずいた。


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2017年12月28日木曜日


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