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<ふるさと息づく 岩手・大槌>(下)つなぐ/「外の力」で神楽支える

金澤神楽を舞う太田さん(左)と、謡を担当する母の佐々木さん(右)

 紅の踊り手は願う。神話のごとく、傷ついた町を再び光が照らし、安寧がもたらされることを。
 天岩戸に隠れた天照(あまてらす)大神(おおみかみ)を外に誘い出す鶏をモチーフにした「鶏子(とりこ)舞」。岩手県大槌町金沢(かねざわ)地区に約200年前から伝わる「金澤神楽」の演目だ。
 伝承者の一人、パート太田未彩希(みさき)さん(30)は、町の郷土芸能が一堂に会する毎年9月の大槌まつりに向け、町の子どもたちを集めて稽古をつける。

<舞い手4人に> 
 もともと金沢の実家が神楽を継承する家系で、2歳の頃から舞に親しんできた。5歳で海沿いに引っ越しても稽古で金沢に通い続けた。
 後継者不足で舞い手が4人にまで減少する中、東日本大震災が転機となった。
 被災地支援団体から体操教室で鶏子舞を教えてほしいとの依頼が舞い込んだ。金沢地区の外の人々に門戸を開くきっかけとなり、「子どもに習わせたい」という親も現れた。
 現在は約15人の子どもを指導している。自身も2児の母で忙しい。まつり前は準備と稽古で2、3時間しか眠れない日々が続き、夫からは「スリヘラスオオミサキ」とからかわれる。
 それでも太田さんは「震災後、大槌で鶏子舞を舞う意味を強く意識するようになった。金澤神楽を途絶えさせたくないという意地もある」ときっぱり言う。

<復興支援が縁> 
 「原点が金沢であることを大事にしつつ、『外の力』を借りなければ伝統は守れない」。こう強調するのは母の佐々木賀奈子さん(55)だ。経営する鍼灸(しんきゅう)院と自宅を津波で流されながらも、太田さんと二人三脚で活動する。
 金沢に嫁いだ約30年前は神楽の低迷期だった。よそ者に教えるのを渋る義父に頼み込み、娘2人と一緒に踊りを覚えた。
 今では復興支援で縁ができた人が東京から駆け付け、まつりの巡行を手伝うようになった。この経験を佐々木さんは、ふるさとを未来につなぐ手段に重ね合わせる。
 住民約440人、高齢化率46%の金沢地区で古民家を改修し、民泊や移住の拠点とする構想が浮上している。町が2018年度に始める地域おこし協力隊員による起業促進事業との連携もにらむ。いずれも外の力が鍵となる。
 町の事業に協力する千葉県の企業経営者を招いての食事会が20日夜、金沢であった。東北への移住を考えているとの発言に、すぐさま掛け声が飛んだ。
 「ぜひ金沢へ」。笑いの輪の中心に、よそ者の先輩、佐々木さんがいた。


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2017年12月30日土曜日


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