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<多酒多様>仙山圏ほろ酔い紀行(2)日本酒 創業4世紀、手作業貫く

酒造り唄の節に合わせて木製の棒でタンク内のもろみをかき混ぜる蔵人たち=2017年12月20日、大蔵村の小屋酒造
小屋和也さん

 東北の横軸、仙山圏には日本酒に加え、ワインやビール、ウイスキーから焼酎まで、名だたる銘酒の産地が東西に連なる。月内には国際ワイン品評会「インターナショナル・ワイン・チャレンジ2018SAKE部門」の山形開催が決まる見通し。酒の話題が地域を盛り上げてくれそうな一年の始まりに、豊かな食文化や行楽を彩る仙山圏の酒造りの現場を訪ねてみる。

◎小屋酒造(山形県大蔵村)

 外は雪。ほの暗い蔵に酒造り唄が響く。

 <銘酒だ銘酒だ 六燗(かん)銘酒で夏もつ酒だよ>
 <エンヤーサー エンヤーサー>

 山形県大蔵村の小屋酒造で昨年12月20日、もろみの発酵を促す「櫂(かい)入れ」があった。3人の蔵人が節に合わせて、木製の棒でタンク内の乳白色のもろみをかき混ぜる。1カ月ほど熟成させた後、絞ると透明な清酒になる。
 3人は夏は地元でトマトを栽培し、冬は蔵人として働く。伊藤貴之さん(38)は酒造りを始めて15年目。「こうじ菌、酵母菌という微生物が相手なので蔵を清潔に保ち、温度をはじめきめ細かいもろみの管理を心掛けている」と言う。
 冬場は決して納豆を口にしない。納豆菌が酒蔵の微生物の天敵となるからだ。
 大蔵村は人口3400。県内で最も小さな自治体だが、江戸時代には最上川舟運の拠点として栄えた。村内には肘折温泉もあり、古くから郷土料理と酒が旅の疲れを癒やしてきた。
 小屋酒造は1593年創業で、山形県の酒蔵で最も長い歴史を持つ。酒造会社でも機械化が進む中、今も多くの工程を昔ながらの手作業で行っている。
 杜氏(とうじ)ら6人の蔵人が11月から翌年2月まで仕込みを続けても、醸造量は年間10万リットルにとどまり、東北の酒蔵の中では少ない方だ。
 代表する銘柄は「絹」「花羽陽(はなうよう)」「最上川」。最上地方の酒造好適米や主食米などを磨いて仕込む。昔は普通酒が多かったが、消費者の高級酒志向に合わせて現在は大吟醸、純米吟醸など特定名称酒が主流だ。出荷先はほぼ県内で、地元の最上地方が7割を占める。
 26代目の小屋和也社長(60)は「地元の食材や料理を楽しみながら一杯、もう一杯と杯が進む酒が理想。伝統を大切にしつつ、よりおいしい食中酒を目指して毎年挑戦を続けたい」と話す。
 米どころの仙山圏は酒どころでもあり、酒蔵は宮城が27、山形は53を数える。その土地の水や米などを使って職人が酒を仕込み、味と品質を競い合っている。
 宮城県で最古の酒蔵は、銘柄「鳳陽(ほうよう)」で知られる富谷市の内ケ崎酒造店。1661年創業で、現在の内ケ崎研代表社員(67)は15代目になる。

[メモ]山形県大蔵村清水2591▽午前8時〜午後5時(土日祝日休み)▽酒蔵見学は原則受け付けていないが、蔵併設の店舗で試飲できる▽0233(75)2001

◎お供コレが乙/馬刺しやガッキ煮 美味/社長・小屋和也さん

 地元のさまざまな食材に合うように仕上げているのが辛口の吟醸酒「花羽陽 花の枝」(720ミリリットル、1717円)。冷やして飲むと、口当たりは軽く滑らか、切れも良く、料理を引き立てるはず。
 最上地方はかつて農耕馬の産地で、農家は馬を飼っていた。その名残で地域に根付いた馬肉料理と一緒に味わってほしい。馬刺しが有名だが、ロースやモモの切れ端やスジ肉などを酒、しょうゆ、ショウガで煮込んだ「ガッキ煮」もお薦め。郷土料理の大根漬けの油炒めや、春は山菜、秋はキノコもおいしい。

◎ちょっと寄り道

 大蔵村にある肘折温泉郷は、出羽三山(月山、羽黒山、湯殿山)の信仰と深い結び付きを持つ湯治場で、2007年に開湯1200年を迎えた。
 現在も旅館・ホテル20軒と公衆浴場1施設があり、年間約7万人が訪れる。主な泉質はナトリウム泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉で、切り傷、やけど、慢性皮膚病などに効能がある。
 温泉郷の肘折いでゆ館ゆきんこホールでは、16年から豪雪の時期に肘折国際音楽祭が開かれ、今年は3月3日の予定。
 宮城、山形両県の多くの酒蔵は見学を受け付けている。仙台国税局ウェブサイトのトップページにある酒蔵マップのバナーをクリックすると県別の酒蔵情報のページに移る。


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2018年01月03日水曜日


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