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<犬(ワン)ダフル!>私の相棒(3)セラピードッグ 互いに癒やし癒やされ

エルに触れてもらおうと男性通所者(手前)の手を取る菅原さん。男性の表情が変わった=昨年12月19日、仙台市青葉区のエコー療育園・通園センターみつばち

 人と犬は今や、飼い主とペット以上の関係を築いている。人の心を支え、癒やし、時には命を救ってくれさえする。戌(いぬ)年の始まりに、東北で育まれた犬と人の強い絆を紹介する。

 「ギャン!」
 南相馬市の老人ホームで昨年11月下旬にあった動物セラピー。雄の小型犬パピヨン「エル」は悲鳴を上げ、抱え上げようとした職員の手から逃れた。
 「抱っこの嫌がり方が異常なんだ。これでもだいぶ慣れたんだけど」。菅原動物病院(仙台市宮城野区)の菅原康雄院長(70)は、エルが過去に虐待を受けた可能性があるとみる。
 「キャリーケースには進んで入る。身を守るために覚えたのかもしれない」
 エルは飼育放棄された。
 6年ほど前、高齢の飼い主が亡くなり、血尿を出したエルを家族が病院に連れてきた。ぼうこうが結石で膨れ上がっていた。手術を提案すると、「治療費は払えない」。暗に引き取りを求められた。

 ペットが入手しやすくなる一方、物のように扱う行為が後を絶たない。心の中で「またか」と、ため息をついた。もし断れば捨てられ、殺処分に回されかねない。結局、引き取った。
 大学卒業後、仙台市職員として保健所や動物管理センターに勤務。経験を積み1985年に開院した。子どもたちに命の大切さを知ってもらうため、センター時代に始めた動物との触れ合い企画は今も続ける。
 94年のクリスマス。子犬1匹を連れて、仙台市内の老人ホームのイベントに参加した。愛らしい表情やしぐさに、会場は歓声と笑顔に包まれた。
 「これだ」。犬の持つ癒やしの力を改めて思い知らされた。高齢者や障害者にも触れ合ってもらおうと96年、「動物セラピー」のボランティアを本格的に始めた。
 犬、猫、ウサギ、モルモットに、最近はミーアキャットも加えて老人ホームや障害者施設などを回る。学校やイベント会場を含めると、訪問が100回を超える年もある。体を動かせない人でも背中をなで、体温を感じることで心に変化がもたらされる。それが刺激になり、生きる喜びにつながればいいと願う。
 中でもエルは、愛らしい表情、フワフワの毛で出会った人を癒やす。抱っこ嫌いになったエルの心の傷を癒やすリハビリにもなる。

 重症心身障害児・者が通うエコー療育園・通園センターみつばち(青葉区)で先月中旬、動物セラピーがあった。菅原さんは横たわる女性通所者の体の上にエルを載せ、女性の手を取って一緒に背中をなでた。
 女性は気管切開で声が出せず、体を動かすこともできない。「犬が好き?」「かわいい?」と問い掛けると、まばたきで「うん」と答えた。
 看護師の平家恵子さん(50)は月に1回のセラピーで、表情が明るくなる通所者を見るのが楽しみになった。「事故の後遺症で、普段は乱暴な行動の目立つ男性が、動物に優しく接するんです」
 本業が忙しい菅原さんは、セラピーの回数を減らしたいとの思いに駆られることもある。訪問先ではエルの周囲に笑顔の輪が広がっている。自問自答する。「続けないと」(千葉淳一)


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2018年01月04日木曜日


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