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<犬(ワン)ダフル!>私の相棒(4)保護犬 互いに深い喪失感を埋める存在

ジージと戯れる阿部れい子さん(右)とベッキを抱える阿部智子さん。偶然の出会いが2匹の運命を変えた=昨年12月15日、宮城県石巻市湊町

 人と犬は今や、飼い主とペット以上の関係を築いている。人の心を支え、癒やし、時には命を救ってくれさえする。戌(いぬ)年の始まりに、東北で育まれた犬と人の強い絆を紹介する。

 宮城県石巻市湊町にある東日本大震災の災害公営住宅で、2匹の老犬が居間を駆け回る。こたつの中を得意げに出たり入ったりする。
 「こら、やめなさいってば」。1人暮らしの飼い主阿部れい子さん(68)に怒られ、小さなしっぽがしゅんと垂れ下がる。

 2匹は、トイプードルの交配種とみられるベッキ(雌、10歳くらい)とジージ(雄、11〜12歳)。2016年10月、仮住まいのアパートからペットが入居できる災害公営住宅に引っ越したのを機に、動物保護に取り組む市内のNPO法人アニマルクラブ石巻から引き取った。
 「その犬、知ってます。飼い主の方はどうしたんですか」。13年春、ベッキとジージがクラブのスタッフと散歩する姿を目にし、思わず声を掛けた。
 飼い主の男性は震災前、同じ町内の顔見知りだったが、12年冬に病死。一軒家に数カ月間、置き去りにされていたところをクラブに保護された。
 男性の親族らが時折、食べ物を持ってきて与えていたが、引き取るには至らなかった。荒れ果てた部屋で、2匹は帰らぬ人になった主人を待っていた。
 「伸び放題の毛に汚物がこびりつき、言葉は悪いが『ぼろ雑巾』のようだった」。クラブ代表の阿部智子さん(58)が保護時の様子を振り返る。
 トリマーに毛並みを整えてもらい、里親探しを始めた。子犬と違い、老犬の引き取り手は簡単には見つからない。2匹をどうしたらいいか途方に暮れていた時、れい子さんに声を掛けられた。

 れい子さんは津波で自宅が全壊。飼っていたシーズーとトイプードルも津波にのまれた。看護師として働きづめだった約20年間、伴侶として心の支えだった2匹の死から、しばらく立ち直れなかった。
 スタッフと散歩するベッキとジージは、同じく小柄だった2匹の愛犬と重なって見えた。引き取る前、れい子さんはボランティアスタッフとして約3年間、クラブの施設でベッキとジージに接した。最初は警戒していたが、徐々に懐いてくれた。「お互い、山あり谷ありの人生。楽しい余生にしたい気持ちは同じなのかも」と思う。
 クラブは行き場をなくした犬や猫の引き取り先を見つける活動を40年近く続ける。保護した犬や猫のそれぞれに、つらい過去がある。ベッキとジージのように高齢の飼い主に先立たれ、路頭に迷うケースも多い。
 「クラブの施設にいても、ベッキとジージは多くの犬や猫の中の2匹。無二の存在として、たっぷり愛情を注いでもらえる場所が見つかって本当に良かった」
 智子さんは、れい子さんとはしゃぐベッキとジージの様子に目を細める。「幸せになってほしい。彼らは飼い主を選べませんから」(横山勲)


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2018年01月05日金曜日


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