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<犬(ワン)ダフル!>私の相棒(6完)アイドル犬 人の輪広がり心救われ

鹿野災害公営住宅のクリスマス会で住民らに囲まれるハナ。被災者を癒やし、つなげる役目も担う=昨年12月16日、仙台市太白区

 「トナカイだ!」。駆け寄ってきた子どもたちに、サンタクロースと共にプレゼントを配り歩く。
 昨年12月16日、仙台市太白区の鹿野災害公営住宅であった町内会のクリスマス会。トナカイに扮(ふん)して現れた柴犬の雑種「ハナ」(雌、13歳)は、住民たちのちょっとしたアイドルだ。
 「かわいいねえ」。頭をなでられると、うれしそうに目を細める。おとなしい性格で、犬が苦手な人からも人気だ。トナカイ役は2015年のクリスマス会以来の恒例。飼い主の小野寺桂子さん(70)は「みんなとここまで仲良くなれたのはハナのおかげ」と感謝する。
 太白区鈎取の自宅で東日本大震災に遭遇。自宅は大規模半壊し、車で近くの小学校に避難した。犬は屋内に入れない。雪が降る中、駐車場に止めた車内でハナと二晩過ごした。
 仮設住宅への入居を希望したが、市の担当者から「犬が飼える住宅はない」と告げられた。ペット可の民間のマンションなどは市内外の被災者が殺到し、あっという間に埋まった。
 仕方なく約3カ月間、傾いた自宅で余震におびえながら過ごした。不安な時に話し掛けると、ハナは黙って耳を傾けた。「手放すという選択肢はなかった。家族だから」
 11年6月、何とか自宅近くのマンションに入居できたものの、その頃からハナは吐いたり、下痢をしたりするようになった。「震災や環境の変化によるストレスが原因ではないか」と医師。ハナも心に傷を抱えていた。
 14年9月、ペットが飼える鹿野災害公営住宅の抽選に当たり、引っ越した。知り合いは一人もいない。「慣れない場所で暮らしていけるのか」。心細さを、ハナが救ってくれた。
 「かわいいですね」「なんて名前ですか?」。ハナと散歩すると、他の入居者が声を掛ける。ハナをきっかけに、ほとんどの住民と知り合いになった。
 ハナと出合う前、「もう犬は飼わない」と誓ったことがある。
 生まれて間もない子犬の時から7年間、一緒に過ごした愛犬「モグ」を02年秋に失った。手術時の麻酔の効き過ぎが原因だった。「世話をすると愛情を持ってしまう。つらい経験はしたくない」と一度は決めた。
 モグといつも散歩していた時間になると家の中にいられなくなり、外に出てしまう。今で言うペットロスの状態を見かねた娘が04年冬、知り合いから生後2カ月の子犬を引き取ってきた。
 「モグじゃない」。最初は戸惑った。でも、まだ目が開ききっておらず、放っておけない。抱きながら哺乳瓶でミルクを与えて育てた。誰にでも覚えやすいように「ハナ」と名付けた。
 「モグがハナを連れてきてくれたのかも」
 何かを失い、新しい何かを得ることの繰り返しが、生きるということかもしれない。震災を経た今、なおさらそう思う。
 「ハナ、ありがとう」。その言葉はモグにも向けられている。(佐藤駿伍)


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2018年01月08日月曜日


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