山形のニュース

<転機の米作り>(1)米価安定 国もなお責任 消費者ファーストも生産者ファーストも不十分

ながさわ・ゆたか 1950年山形市生まれ。東京農大卒。母校の上山農高(現・上山明新館高)で講師を務めた後、家業のブドウ農園を継ぐ。2012年から山形県農協中央会長。17年から現職。67歳。

◎全国農業協同組合連合会長 長沢 豊氏

 国によるコメの生産調整(減反)が2018年産から廃止され、半世紀近く続いたコメ政策は大転換期に入る。国内有数の米どころで、農業産出額の多くを依存する東北。転機とどう向き合い、いかに先行きを見通すか。関係者に聞いた。(5回続き)

 −コメ政策の転換をどう捉えているか。

<食料安保に直結>
 「コメの需給調整を民間主体の全国農業再生推進機構に任せ、生産者らの自主性を重んじる格好になっているが、国が責任を放棄したとの見方もできる。主食であるコメの安定供給は食料安全保障と直結する」

 −国が果たす責任とは。
 「産地間競争は効率化や品質向上の面で大切だが、競争原理だけに委ねると米価が安定せず、農家の生活基盤が揺らぐ恐れがある。一定の秩序が必要で、国はそれを最終的に支える役割を担ってほしい」
 −生産者の意識改革も必要では。
 「生産調整がなくなることで生産者の責任は重くなる。高値を求めるだけでなく、安定した米価の実現に向け、自らやるべきことを考えなければならない。消費者ファーストも生産者ファーストも不十分だ。双方が納得できる安定した価格の実現が、生産と生活の安定につながる」

 −コメの直接支払い交付金の財源はどう使うべきか。
 「700億円超の財源はコメ農家の経営支援に使われると理解している。新年度の予算編成を見聞きしていると、国は財源を農業農村基盤整備にも充てようとしている。農地の基盤整備は土地改良の予算が別建てであり、直接支払いの財源を使うべきではない。いつの間にか議論がすり替わり、政策に一貫性がない」

 −農協グループの在り方も問われている。

<園芸振興を推進>
 「山形を含む東北の産地は生産目標を守ってきた。一方、毎年複数の同じ県がルール無視を続けている。政策転換後も正直者がばかを見る状況が続くことが予想され、農協グループが一枚岩になっていないという現実を思い知らされる」
 「そうした地域に『生産の目安を守りなさい』と言うだけでは効果がない。収益性の高い園芸の振興を進め、コメだけに頼らない農業を実現していく」
 −具体的には。
 「既に山形県では園芸大規模団地を造るなど、地域ぐるみで収益性の高い農業へと転換する動きが出ている。その流れを全国に広げていきたい」
 「野菜を運ぶコンテナを鉄からセルロースなどの繊維素材に変えて軽量化したり、IT技術を駆使して注文から決算までの管理システムを構築したりして物流の在り方に変革を起こす。流通も見直し、収益性の向上を図っていきたい」
(聞き手は山形総局・宮崎伸一)


関連ページ: 山形 経済

2018年01月08日月曜日


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