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<災害時BCP>東北の市町村策定率44.1%どまり 復興優先、職員の手回らず

 東日本大震災で被災した東北の市町村で、災害時の業務継続計画(BCP)の策定率が低迷している。6県で策定済み(2017年6月時点)は100市町村。策定率は44.1%で、全国平均に比べ20.1ポイントも低い。青森、福島は20%台にとどまり、全国最低水準となっている。

 自治体は防災担当職員が慢性的に不足しており、被災地では復旧復興の進展によってその姿が刻々と変化している現状がある。震災から間もなく7年。専門家は早急な策定と定期的な見直し、改善を求める。
 総務省消防庁の調査結果は表の通り。策定率が全国平均を上回ったのは東北では宮城のみ。17年度末までの策定見込みを含めると6県では62.1%に上昇するが、全国を18.7ポイント下回る。大地震に遭った兵庫や鳥取、熊本の100%とは対照的だ。
 震災の巨大津波や東京電力福島第1原発事故で被災した岩手、宮城、福島3県の42市町村のうち、策定済みは45.2%に当たる19市町村。陸前高田市や宮城県南三陸町は庁舎が全壊して行政機能がまひし、福島第1原発周辺の市町村は住民避難や役場移転を強いられた。
 教訓が次の備えに十分反映されているとは言い難い状況だ。未策定の宮城県女川町は「大枠となる地域防災計画の策定が約2年遅れており、BCPも後ろにずれ込んでいる。BCPの必要性は分かるが、そもそも津波で流された町の大部分を一から造り直しているのが現状だ」(企画課)と歯切れが悪い。
 原発事故に伴う避難指示が一部を除き17年4月解除された福島県富岡町は19年度ごろの策定を目指す。担当者は「避難所となる施設の一部は未復旧。帰町した住民も震災前の人口にはほど遠く、町内の状況を見ながら検討したい」と話す。
 原子力施設が集中する青森県下北半島は、北海道東部沖の海溝型地震による大津波発生が懸念される。六ケ所村原子力対策課は「少ない防災担当職員が原子力対策も担当し、BCPまでなかなか手を掛けていられない」と明かす。
 「『作れ、作れ』とせかされる計画の類いがたくさんあって、少人数の対応ではとてもお手上げというのが市町村の実態」
 青森県防災危機管理課はこう指摘した上で「大災害の経験が少ないのも遠因かもしれない。市町村に出向く支援、首長向け防災セミナーなど、上から下から地道に意識改革を促し続けるしかない」と強調する。

[業務継続計画(BCP)]大災害など緊急事態に備え優先すべき業務を特定し、執行体制や対応手順、資源確保などを事前に定めた計画。内閣府の市町村向け作成ガイドは(1)首長不在時の代行順位、職員の参集体制(2)本庁舎が使用できない場合の代替庁舎(3)電気や水、食料の確保(4)多様な通信手段の確保(5)重要データのバックアップ(6)非常時優先業務の整理−を「重要6要素」と位置付ける。

◎県の主導が必要
<東北大災害科学国際研究所の丸谷浩明教授(防災社会システム)の話>
 調査結果は、着手した程度を含む数字と捉えた方が実情に近い。「重要6要素」が全てそろわないBCPは根本的に欠陥がある。人事異動や組織改編、災害協定先といった変化に対応するには年1回見直さないと効果は劣化する。
 市町村BCPは首長と幹部がやる気になり、組織全体で取り組まないと前進しない。市町村の災害対応業務は類似しており、一緒に策定し改善する機会を県の主導で継続的に設ける必要がある。「被災地は復興が優先」は先送りの弁解という面が否めない。


2018年01月10日水曜日


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