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<ニュース深掘り>宮城県公立高入試 20年度に新制度 教育課題、改善の好機に

 2020年度に導入される宮城県公立高入試の新制度が昨年12月、正式に決まった。前期・後期選抜の統一による入試期間の短縮で、生徒や教員の負担は大幅に軽減される。具体的な選抜方法などは各校の検討に委ねられ、募集要項の公表は18年秋になる見通し。円滑な移行への周知徹底や受験生の不安払拭(ふっしょく)に向けた取り組みが急がれる。
 入試制度の変遷は表の通り。受験機会のさらなる拡大を目的に前期・後期選抜を導入した現行制度は、13年度からわずか5回の実施で見直しを余儀なくされた。前期で不合格になった受験生の精神的負担が大きいなど、当初から課題が指摘されてきた。
 部活動や生徒会活動の成果を求めた前期の出願条件や資格も、生徒間の過剰な競争を誘発し、学校生活を窮屈にしているとの意見も出ていた。早期の制度見直しによる試験の一本化は必然的な流れと言える。
 学力以外の能力を見る前期選抜の理念は、新設の特色選抜に継承される。評定平均値などの出願条件は撤廃。県教委の高橋仁教育長は「子どもが自発的に充実した学校生活を送り、結果的に進学への評価に結び付くのが理想だ」と話す。
 県教委の狙いとは裏腹に、面接、作文、実技を選考基準にできる特色選抜を各校が積極活用するかどうかは未知数だ。「難関大の合格実績を伸ばしたい進学校は特色選抜の割合を下限の10%に抑え、学力検査の比重を高めるのではないか」(仙台市内の学習塾関係者)との見方も根強い。
 学校間の学力競争を助長する結果になれば、新制度の目指す理念に逆行する。子どもの個性や適性を評価し、意欲を引き出す特色選抜の意義を県教委は丁寧に説明し、制度を形骸化させない工夫が求められる。
 宮城の教育を取り巻く現状は厳しい。小中学校の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)はほとんどの科目で全国平均以下の低迷が続き、昨年10月に発表された児童生徒の問題行動調査による県内の不登校割合は全国最多となった。
 新入試制度では不登校生徒への救済措置として、調査書の成績を評価に加味しないことも認めた。進学先の選択肢拡大につながる方針転換は評価できる。一方で、入試と表裏一体の学力づくりに対するメッセージは見えず、物足りない印象が否めない。
 学力の捉え方を巡っては知識だけでなく、思考力や判断力を重視する潮流が強まっている。文部科学省は大学入試センター試験の改革を打ち出し、出題形式の見直しなどで学力の質的変化を導こうとしている。
 県教委も学年ごとの具体的な到達目標を改めて示すなどし、小学校を含めた学力の底上げや学びへの意欲を育む対策をセットで進めるべきだろう。
 「入試制度の仕組みばかりに多くを求め過ぎてはいけない」。県高校入学者選抜審議会の柴山直委員長(東北大大学院教育学研究科教授)は警鐘を鳴らし、主体的な学びを日常的に継続する重要性を強調した。
 新制度を軸にした教育環境向上の取り組みは、これからがスタートとも言える。入試改革を単なる選抜の通過点に終わらせず、義務教育の9年間を束ね、子どもの選択肢を広げる好機に位置付けてほしい。(報道部 鈴木悠太)

[宮城県公立高の新入試制度]現在の中学1年生が受験する2020年度に導入される。現行の前期・後期選抜を一本化し、学力検査と調査書で評価する「共通選抜」と、学校ごとに選考方式を定める「特色選抜」で合否を決める。共通、特色選抜の募集割合は体育や美術の学科や定時制課程で10〜90%、それ以外では10〜50%の範囲で学校が設定する。評定平均値などの出願条件は撤廃する。


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2018年01月15日月曜日


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