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<白神山地>シカ増加、食害でブナ林荒れる恐れ 国や自治体が駆除開始

青森県深浦町の国有林で監視カメラが撮影したニホンジカ=2017年10月(東北森林管理局提供)
白神山地周辺でシカを捕らえるわなを設置する青森県猟友会の関係者ら=2017年12月、青森県深浦町(青森県提供)

 世界自然遺産の白神山地(青森、秋田両県)周辺で、貴重なブナ林を食い荒らす恐れがあるニホンジカが増加している。生態系に大きな悪影響が出れば遺産認定が取り消される可能性もあり、国や地元自治体が連携して駆除に乗り出した。

<幹まで>
 「大きな二つのひづめの跡を追っていけば、シカの居場所にたどり着ける」。白神山地の青森県側で、2017年12月17日に開かれた講習会。登山者のマナー違反などを見回る巡視員約20人を前に、有害鳥獣の専門家がシカの足跡やふんの特徴を伝えた。
 シカは下草や木の実だけでなく、樹皮を剥いで幹の部分もかじる。ブナの原生林が広がる白神山地は格好の餌場となり、木々が枯れてしまう恐れがある。
 主催した林野庁の担当者は「貴重な自然を後世に引き継ぐため、痕跡を見つけたら連絡してほしい」と呼び掛けた。

<ほとんどが雄>
 東北北部のニホンジカは、明治時代ごろ狩猟で絶滅したとされてきた。だが10年に目撃情報が寄せられたのを皮切りに、右肩上がりで増加。昨年8月には人の手が加わっていない原生林の残る白神山地の「核心地域」でも初めて確認され、同12月15日時点の総数は68頭に上る。
 監視カメラに撮影された個体を解析すると、ほとんどが雄。子どもを産む雌はおらず、環境省東北地方環境事務所の安生浩太自然保護官は「生息場所を求めて周辺から移動してきた段階で、まだ繁殖はしていない」とみている。
 ただ、岩手県など周辺で増加が進めば、雌が移動して定着する可能性もある。「爆発的な増殖を阻止するには、遺産地域に入る前に駆除しなくてはならない」と危機感を強めている。

<限界も>
 捕獲には課題が多い。環境省は猟友会に駆除を委託したが、ハンターの減少や高齢化が顕著で恒常的な活動は難しい。加えて、遺産地域内は険しい地形が多く駆除には限界がある。
 林野庁や青森、秋田両県は試験的にわなを設置しているものの、カモシカなど保護すべき野生動物がかかる可能性があり、大量の設置は困難。「増えてからでは遅いと言われるが、増えないとわなにかからない」(秋田県の担当者)と効果を疑問視する声もある。
 北里大の岡田あゆみ准教授(動物生態学)は「捕獲の圧力をかけない限り、数は増え続ける。経験がない以上、さまざまな駆除手法を試す必要がある」と指摘した。


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2018年01月15日月曜日


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