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<囲碁棋聖戦>第42期7番勝負 井山棋聖と一力八段 タイトル懸け3度目の攻防 18日開幕

一力八段
井山棋聖

 囲碁の井山裕太棋聖(28)=名人、本因坊、王座、天元、碁聖、十段=に仙台市出身の一力遼八段(20)が挑戦する第42期棋聖戦(読売新聞社主催)7番勝負の第1局が18、19の両日、東京都内で打たれる。井山棋聖は6連覇が懸かり、一力八段は初の七大タイトル獲得を目指す。昨年10〜11月に一力八段が井山棋聖にダブル挑戦した天元戦、王座戦では、井山棋聖がいずれもストレート勝ちして若き挑戦者を退けた。年が明けて心機一転、一力八段は戦力を立て直し連続で三つ目の挑戦手合に臨む。熱い戦いが繰り広げられる囲碁の「冬の陣」だ。

◎棋聖戦は序列最上位

 日本国内の囲碁棋戦は棋聖戦(1976年設立)、名人戦(74年設立)、本因坊戦(39年設立)、王座戦(52年設立)、天元戦(75年設立)、碁聖戦(75年設立)、十段戦(61年設立)が7大タイトルとされる。
 いずれも、前回の棋戦を制したタイトル保持者に、挑戦者決定トーナメントなどで挑戦権を獲得した棋士が挑む「挑戦手合」制で行われる。
 棋聖、名人、本因坊の3棋戦は4勝した方がタイトルを得る7番勝負。王座、天元、碁聖、十段の4棋戦はどちらが先に3勝するかを競う5番勝負。番数が多く賞金額も大きい棋聖、名人、本因坊は3大棋戦とも呼ばれる。
 棋聖戦は優勝賞金が4500万円と最高でもあり、7大棋戦の中で最上位に位置付けられる。挑戦権を得れば八段に自動昇段する規定で、今回の棋聖戦に臨む一力遼八段も昨年11月の挑戦者決定戦を制した時点で八段に昇段した。

◎2日制体力も必要、封じ手でも駆け引き

 持ち時間が各3時間の天元戦などはその日で打ち切ってしまうことから、1日制の碁という。
 棋聖戦のように持ち時間が各8時間の碁は1日では打ち切れない。2日がかりの対局となるため2日制の碁と呼ばれている。
 2日制の碁は時間が長く、納得するまで考えられる利点がある。逆に長いと体力、集中力がより必要で、年を取ると厳しいという指摘もある。
 1日目の対局中断時は、封じ手の措置が取られる。中断した際の手が相手に分かると、相手は一晩、対策を考えることができる。
 この不公平をなくすため、中断の時刻に打つ番(手番)の棋士は、次の手を相手に分からないよう紙に記入し封筒に入れ、封印する。翌朝、封筒を開いて次の手を示し再開する。
 その手で良かったか、記入ミスしなかったか、などと悩みがちな封じ手を嫌う棋士もいる。どちらが封じるかの駆け引きもある。

◎公式戦井山が11勝3敗/初対局は一力の勝利

 井山棋聖と一力八段の公式戦での対局はこれまで14回あり、井山棋聖の11勝3敗となっている。
 初対局は2015年2月のNHK杯準決勝。一力八段が白番中押し勝ちした。当時、棋聖、名人、本因坊、碁聖の4冠を誇っていた井山棋聖に初戦で勝った若手棋士として、17歳の一力八段が一躍脚光を浴びた。
 2局目となった同年7月の王座戦本戦は、井山棋聖が白番中押し勝ちでリベンジ。翌16年8月はテレビ囲碁「第25期竜星戦」の決勝で対決、一力八段が白番中押し勝ちし優勝した。
 当時一力八段は19歳1カ月で、第18期竜星戦で井山棋聖が作った20歳2カ月の最年少優勝記録を更新した。ここまでの対戦成績は一力八段が2勝1敗とリードしていた。
 その後、対決の舞台は棋士として一度は立ちたいと思うタイトル戦に移る。16年10月から天元戦5番勝負を戦い、井山棋聖が3勝1敗で防衛する。
 昨年2月のNHK杯決勝(井山棋聖の白番中押し勝ち)を挟み、同10月から再び天元戦5番勝負、さらに王座戦5番勝負でも対決する。結果はいずれも井山棋聖のストレート勝ちとなった。
 今回の棋聖戦7番勝負は、昨年の天元戦、王座戦に続く3連続同一カードのタイトル戦となる。7冠を独占している井山棋聖との対局は、挑戦者まで勝ち上がらないと実現できない状況になっている。

<井山棋聖と一力八段の公式戦成績>           【勝者】
(1)第62回NHK杯準決勝  (2015年2月)   一力八段
(2)第63期王座戦・本戦2回戦(2015年7月)   井山棋聖
(3)第25期竜星戦決勝    (2016年8月)   一力八段
(4)第42期天元戦第1局   (2016年10月)  井山棋聖
(5)第42期天元戦第2局   (2016年11月)  一力八段
(6)第42期天元戦第3局   (2016年12月)  井山棋聖
(7)第42期天元戦第4局   (2016年12月)  井山棋聖
(8)第64回NHK杯決勝   (2017年2月)   井山棋聖
(9)第43期天元戦第1局   (2017年10月)  井山棋聖
(10)第65期王座戦第1局  (2017年10月)  井山棋聖
(11)第43期天元戦第2局  (2017年10月)  井山棋聖
(12)第65期王座戦第2局  (2017年11月)  井山棋聖
(13)第65期王座戦第3局  (2017年11月)  井山棋聖
(14)第43期天元戦第3局  (2017年11月)  井山棋聖

◎長い持ち時間 読み合い必至

 井山棋聖は現在、日本の囲碁界では頭一つ抜き出た存在だ。昨年10月に名人を奪還し、棋聖、名人、本因坊、王座、天元、碁聖、十段を同時制覇する7冠に復帰した。
 さらに同11月には国際棋戦のLG杯準決勝で世界ランキング1位の柯潔九段(中国)に勝ち、決勝に進んでいる。絶好調である。井山棋聖の師匠、石井邦生九段が「この一年で井山はまた強くなった」と驚いているほどだ。
 読みの深さ、踏み込みの鋭さ、形勢の判断力は世界でもトップレベル。ずばぬけた粘り強さや精神力もある。いま一番打てている棋士と言っていい。
 昨年の王座戦5番勝負第2局は、中盤で一力八段が好手を出し優勢になった。井山棋聖が「負け碁だった」と認めた内容だったが、紛れを求めて粘り強く戦い最後は逆転した。
 同時並行で行われた天元戦5番勝負の第1局でも井山棋聖は、一力八段が勝ってもおかしくない形勢をひっくり返している。一力八段は1勝も挙げられなかったが、いずれも紙一重の勝負でどちらに転んでもおかしくない戦いだった。
 対局後、一力八段は「(3時間の持ち時間を使い切って1分以内で打つ)秒読みになってから差が出た」と敗因を分析した。
 井山棋聖は2008年に19歳で名人戦に挑戦して以来、毎年厳しいタイトル戦を戦い、そのほとんどが秒読みになってから何手も打ち、ぎりぎりの勝負を繰り返してきた。そうした経験が秒読みになってからもミスなく正確に打てる要因になっている。
 棋聖戦7番勝負は持ち時間がそれぞれ8時間あり、2日がかりで打たれる。天元戦、王座戦の持ち時間各3時間と比べ、考える時間は倍以上長い。
 一力八段の師匠、宋光復九段は「一力は考えていろいろな図を作って比較するのが好きだから、持ち時間の長い方がプラスになる」と指摘する。
 2人が2日がかりで対局するのは初めてだ。これまでのように妥協しないで目いっぱい打ち合う碁になるのは間違いない。どの対局も激しい戦いが起きるだろう。
 しかも戦いは両者とも時間をたっぷり使って深い読みの中から着手され、常識を超えたドラマとなる可能性が高い。囲碁ファンを興奮させ、見応えのある7番勝負が期待できそうだ。
(河北新報囲碁記者 田中章)


<一力遼八段の話/余裕失わず戦いたい>
持ち時間8時間の2日制の碁は初めてなので楽しみです。(井山棋聖と戦った)天元戦、王座戦では秒読みになってから差が出た。今度は時間配分を考え、秒読みになっても余裕を持って入りたい。厳しい相手ですが、精いっぱい頑張っていい結果を残したい。

<井山裕太棋聖の話/今が一番成長感じ>
厳しい対局が続き、その一つ一つが力になり、今が一番成長していると感じている。一力八段は完成度が高い。早碁に強いイメージがあるが、深く読むタイプで考えれば考えるほどいい手を打つ。持ち時間の長い2日制の対局なので、深い読み合いの内容のある碁をお見せできればと思います。

<棋聖戦の日程>
◆第1局 1月18日(木)、19日(金)
 東京都文京区「ホテル椿山荘東京」

◆第2局 1月25日(木)、26日(金)
 八戸市「八戸パークホテル」

◆第3局 1月31日(水)、2月1日(木)
 長崎県西海市「オリーブベイホテル」

◆第4局 2月15日(木)、16日(金)
 大船渡市「大船渡市民文化会館」

◆第5局 2月22日(木)、23日(金)
 神奈川県箱根町「ホテル花月園」

◆第6局 3月8日(木)、9日(金)
 新潟県南魚沼市「温泉御宿 龍言」

◆第7局 3月14日(水)、15日(木)
 静岡県伊豆市「玉樟園新井」


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2018年01月16日火曜日


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