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<脱埋没への模索 どうする登米・栗原>第2部 市民生活(3)産科医療(下)/立場越え相互理解を

産科医不足の現状などについて意見を交わす「登米市の医療を考える会」のメンバー

 宮城県北部に隣接して位置する登米・栗原両市はいずれも広大な市域に集落が点在する過疎地で、都市機能の集積が乏しく市民生活は利便性に欠ける。産科を中心に医療体制は脆弱(ぜいじゃく)だ。手薄な公共交通機関は市民ニーズを満たせず、通院や買い物にはマイカーが欠かせない。第2部では産科医療と市民バスの現状を取材した。(登米支局・本多秀行、若柳支局・横山寛、栗原支局・土屋聡史)

 「市長選を機に、産科がまた話題になっているね」「本当に医者を呼べるならありがたいけど、一筋縄ではいかないでしょう。市民が現状と向き合う機会を増やさないと」
 昨年11月末、有志団体「登米市の医療を考える会」の打ち合わせ会。創設メンバー3人が、最近の医療事情について話していた。
 考える会のモットーは「医師不足を嘆くのではなく、市民も意識を変える」。医療現場の内情を知ってもらおうと、医師の過酷な労働実態を伝えたりコンビニ受診を控えるよう呼び掛けたりしている。
 だがかつては会自体が「嘆く側」だった。結成は市佐沼病院(現登米市民病院)が分娩をやめた2007年。母親らが「産科復活を」と決起したのが始まりだ。「いわゆる要望団体の色が濃かった」(メンバー)。

<意識改革促す>
 関係機関や政治家に窮状を訴えた。市長が駄目なら県議へ、その次は国会議員へ。だが突き付けられたのは、産科医の絶対数が足りないという現実だった。
 活動を通じ、医師の立場も知った。24時間態勢の激務、訴訟リスクの重圧、高まる要求…。遠藤真理子さん(43)は「医療現場の内情を市民がどれほど分かろうとしていたか、考えさせられた」と振り返る。
 結成から約1年後、市民の意識改革を訴える方針に転換した。須藤明美会長は言う。「『医者よ来い』では事態は前に進まない。人材が働きたくなる地域力を高めることこそが大事だ」
 医師側にも、市民と積極的に向き合う動きが出始めている。登米市迫町の「コーヒードクターズ」。医療従事者と市民の交流スペースをコンセプトに据えた、14年6月開店のカフェだ。

<口コミ広がる>
 東日本大震災の医療支援を機に市内に在宅診療所を開いた田上佑輔さん(37)が運営する。「市民と医師が気軽に話せる場を」との理念が口コミで広がり、時に店内で医療関係者や行政職員、市民らが談笑する。
 店長の酒井実さん(69)は「産科の議論もそうだが、互いに言葉を交わす場がないから不信感が膨らむ。実のある意見交換ができれば誤解も解け、次の展開につながる」とみる。
 登米市民病院はサービス向上に向け昨春、窓口にコンシェルジュを配置。栗原市では、公立病院の医師が地域に出向き住民と交流する出前講座が浸透し始めた。市民との距離を詰める取り組みが芽吹きつつある。
 「人材が枯渇する産科をはじめ今後の地域医療に大事になるのは、医師と市民、行政の相互理解に尽きる」と説くのは、宮城大地域連携センター長の竹内文生教授(地域医療論)だ。
 「人口減が急速に進む地方で、一昔前と同じ産科サービスを期待するのは難しい」とした上で「市民が危機感を持って主体的に町の医療の在り方を考え、どのように育てていくかが問われている。その結果が、数十年後の地域に反映される」と指摘する。


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2018年01月20日土曜日


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