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<まちかどエッセー・村尾沙織>ひらめきの波

[むらお・さおりさん]コラージュアーティスト。岐阜県生まれ。武蔵野美術大視覚伝達デザイン学科卒業。第1回アルビオンアワード金賞受賞。色鮮やかな和紙を切り貼りして描く独自の貼り絵技法で、生命力のある動物を描いている。全国の百貨店で展覧会を開催しながら、オーダーアートにも取り組んでいる。仙台市若林区在住。

 かの有名な画家、ピカソは言った。「ひらめきは自分で呼び込めるものではない。私にできることは、ひらめきを形にすることだけだ」
 絵を描いているとよく分かるのだが、意図的にひらめきを得ようと構えれば構えるほど何も湧いてこない。むしろ、ゆっくり食事をしたり湯船でまったりしているときに、突然ハッとするようなアイデアやイメージが湧いてくる。
 それもほぼ完璧な青写真で脳裏に焼き付き、後は持ち得る表現技術を使って色鮮やかに再現していくような感覚で描いている。
 展覧会でよく聞かれる質問の一つに「作品を1枚仕上げるのにどれくらい時間がかかりますか?」というものがある。これはなかなか難しい質問で、一体どこからどこまでが制作時間なのか、私自身もはっきりと分からない。
 創作活動というのは、青写真を具現化する行為だけを指すのではなく、ひらめきが訪れるまでの待ち時間をも含むと思っている。
 それはつまり、日常生活において感じる喜びや悲しみ、希望や絶望などさまざまな心の葛藤を経験する時間のことである。そしてそこからの学びとして得たものが、まるで抜き打ちテストのように、ひらめきの波となって訪れるのだ。
 そう、ひらめきとはふいに打ち寄せる深青の大波に似ている。到底コントロールの及ばない自然の産物だ。そして私たちは未知なる大波を乗りこなそうと奮闘しているサーファーのようでもある。
 日々、挑戦と失敗を繰り返しながら心と身体と技術と勘を鍛え、やがて来る大波に備えている。だからこそ大波をクリアしたときの喜びはひとしおであり、その生きざまと勇姿に人は感動を覚えるのだ。
 私にとってのサーフボードは絵筆だ。ひらめきの大波をキャッチし、色鮮やかに筆を走らせるため、いま必要な学びをこの人生で経験しているのだろう。
 ひらめきは呼び込むことはできない。だが必ず最善のタイミングでやって来る。ピカソはこうも言っている。「全ては奇跡だ」と。
(コラージュアーティスト)


2018年01月22日月曜日


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