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<福島米が足りない>(下)業務用米 伸びる需要戻らぬ価格 中食ブーム対応戦略を

倉庫に積まれ、出荷を待つ「天のつぶ」などの福島産米=福島市内

 福島市内の貸倉庫に県のオリジナル米「天のつぶ」やコシヒカリが所狭しと積まれる。大部分は「業務用米」になり、コンビニエンスストアや外食チェーンで使われる。
 商品化されると、包装やメニューに「福島産」の文字が表に出ないことが多い。東京電力福島第1原発事故による風評の影響なのか。倉庫を利用する福島市の農業生産法人「カトウファーム」の加藤晃司社長が皮肉交じりに言う。「みんな気付かないうちに、コンビニのおにぎりはどんどんおいしくなっている」
 加藤社長は需要増に乗り、首都圏で福島県産米を使った直営飲食店の出店を構想する。
 2017年産米は中食、外食需要の増加や夏場の天候不順などで全国的に供給量が不足する。元々、品質に定評のある県産米の引き合いは一気に高まった。
 県産米の4分の1を販売する全農県本部。主食米全体の取扱量は原発事故前の11万トンから8万トンに減ったが、業務用米の割合は逆に7割から8割に伸びた。買い付け業者の問い合わせも前年の1.5倍に増えた。
 だが、肝心の価格の戻りは鈍い。県本部の渡部俊男米穀部長は「いいとこ取りだ」と悔しがる。
 事故から7年近くたち、流通業者の間で既に福島県産米の安全性は認識されている。実体のない風評を、流通業者が価格交渉で巧みに使う。ある卸業者は「外食は何より価格の安定を求める。値頃感はありがたい」と打ち明ける。
 県も原発事故で販路を失った経験から、思い切った販売戦略を描けずにいる。
 18年産米について、国の生産調整(減反)に代わる「生産の目安」を17年の栽培面積より249ヘクタール減らして設定した。減少幅は東北最大だ。
 設定に携わった農協関係者は「急激に増産すれば価格は下がる。農家の所得を最優先にした現実的な数字」と説明。県水田畑作課の担当者も「需要が大きいからといって生産を増やす人はいない」と言い切る。
 多収品種の「天のつぶ」は業務用米市場の看板商品になる可能性もある。各自治体は高付加価値の家庭用米でしのぎを削っており、業務用米需要をターゲットにする競合新品種は少ないからだ。
 今後の業務用米の需要はどう動くのか。福島大の生源寺真一教授(農業経済学)は中食ブームが続き、「減ることはない」と予測する。
 県産米の販売戦略については、「業務用米の価格は供給量に左右されやすいので、安定した取引先とつながることが重要になる。農協などはもっと消費現場にアプローチし、外食や中食のニーズを学んではどうか」と提案。需要を掘り起こしながら計画的に増産すべきだと指摘する。


2018年01月22日月曜日


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