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<丸森再耕 原発事故を超えて>共同店舗 再生の拠点へ

共同店舗のイメージを膨らませる佐久間さん(右)たち。協議会メンバーが結束して計画を進めている

 東京電力福島第1原発事故で、県南に位置する丸森町は深刻な放射能汚染被害を受けた。町が再生を果たすには、住民の自治力が鍵を握る。町内は中山間地が多く過疎化が進むが、原発事故を乗り越えコミュニティーの再構築を目指す新たな動きが出ている。自治組織の取り組みを追う。(角田支局・会田正宣)

◎自治(上)結束

<住民出資で開設>
 「この壁を抜いて、キッチンと飲食スペースを広げよう」
 丸森町筆甫の自治組織「筆甫地区振興連絡協議会」のメンバーたちが21日、地区中心部にある空き店舗を点検した。協議会は建物を改修し、住民出資による共同店舗を5月に開設する。
 原発事故の被害が町内で最も深刻だった筆甫地区では、直売所や飲食店が休業。共同店舗は直売所とカフェを併設し、地域再生の拠点を目指す。
 協議会のお店づくり委員会の一員、主婦佐久間莉加さん(33)は「昔ながらの雰囲気で地元の農産物が並び、名物おばあちゃんのような店番がいるといい。子どもたちが学校帰りに立ち寄れる場になってほしい」と夢を膨らませる。
 佐久間さんの長男(7)は原発事故当時生後11カ月で、佐久間さんは健康への影響を特に心配した。楽しみだった山菜採りもやめた。
 「筆甫が活気を取り戻してほしい。地域の顔なじみのつながりが、店の運営に生きると良い」と願う佐久間さん。住民は共同店舗に期待を寄せる。
 同地区では2000年から、住民と新規就農者によるNPO法人が移住体験ツアーなどを企画。毎年のように20〜40代の移住者が入って来ていたが原発事故で途絶えた。事故前は810人が住んでいたが、昨年12月末では582人。高齢化率は51.72%に上る。
 吉沢武志協議会事務局長(41)は「原発事故さえなければ、移住者はもっと増えていたはずだ。筆甫は地方創生を先取りしていたのに、失われたものは大きい」と悔しがる。

<原発対応に奔走>
 従来の自治組織を改編した筆甫を含め、町内8地区で自治組織が07年に設立された。10年度に公民館がまちづくりセンターに改編され、自治組織が指定管理を受託。自治組織が町の交付金を活用し、自主的に活動する住民協働のまちづくりが本格化した。
 だが、筆甫の協議会は、直後から原発事故対応に追われた。
 住民への東電の賠償が、隣接する福島県内の自主的避難対象区域と格差があった。協議会は13年5月、裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立て、1年越しで福島並みの賠償を勝ち取った。町当局が15年に申し立てたADRに先駆けた。
 申し立ての中核を担った吉沢局長は「地域の課題解決に行動する自治組織がなかったらADRはできなかった」と振り返る。
 吉沢局長は「原発事故対応が一段落し、住民が『もう一度地域を何とかしよう』と気持ちを一つにしている。地域を維持する仕組みを整えるのは今しかない」と力を込める。
 もともと自治力が高かった筆甫地区。原発事故に立ち向かう中で結束を強めた組織のエンジンがかかってきた。


2018年01月29日月曜日


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