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<丸森再耕 原発事故を超えて>お茶飲みで絆を再確認

大張1区のお茶飲み会で交流を深める大槻さん(左)たち。地域の絆が見直されている

 東京電力福島第1原発事故で、宮城県南に位置する丸森町は深刻な放射能汚染被害を受けた。町が再生を果たすには、住民の自治力が鍵を握る。町内は中山間地が多く過疎化が進むが、原発事故を乗り越えコミュニティーの再構築を目指す新たな動きが出ている。自治組織の取り組みを追う。(角田支局・会田正宣)

◎自治(下)結いの心

 塗り絵を楽しみ、持ち寄った米と野菜で昼食。コーヒーとケーキを味わいながら、よもやま話に花を咲かせた。
 丸森町大張1区の集会所で2017年12月中旬、毎月恒例のお茶飲み会があった。1人暮らしの中村かめ代さん(83)は「みんなとおしゃべりできて楽しい」と目を細めた。
 大張の自治組織「大張自治運営協議会」の事業で、1人200円の会費に補助を上乗せして運営する。地区内8行政区ごとに行われ、大張公民館時代の1960年ごろから続く住民交流の場だ。
 町はお茶飲み会を活用して認知症予防などの健康教室を開く。全行政区できめ細かく教室を開催しているのは大張だけで、お茶飲み会の存在が大きい。
 地区全体のお茶飲み会を取りまとめる協議会副会長の大槻静江さん(70)は「地域の絆を強め、高齢者の安否確認もできる」と効用を説く。
 96歳の母と夫、長女夫婦と孫の4世代7人家族で暮らす大槻さん。15歳で東京に出て美容師になり、20歳のときに帰郷した。「田舎が好きでなかったが、東京に出て地域の人情の深さも分かった」と振り返る。

<利便追求に疑問>
 大槻さんは約30年前、国の原子力モニターを務め、運転開始前の高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)などを見学した。「全能でない人間がコントロールできるのか」と不安を覚えた。その後、もんじゅはナトリウム漏れ事故を起こし、他の原子力関連施設でもトラブルが続いた。
 そして、東京電力福島第1原発事故で大張も被害を受けた。特産の原木シイタケやタケノコの出荷規制が今も解除されていない。
 「人間はそこまで利便性を追求する必要があったのか。原発事故に『ああ、やっぱり』と思った」と大槻さんは指摘する。「普通に暮らせる人生が幸せ。そのためにも地域で支え合う結いの精神が大切だ」。しみじみと語る。

<「憎い」が口癖に>
 大槻さんの友人で、7区の前のお茶飲み会長を務めた高橋しずいさん(66)は福島県浪江町の出身。法事で浪江に滞在していて、東日本大震災と原発事故に直面した。親戚宅のビニールハウスで一夜を明かし、1人暮らしの母(92)を大張に連れてきた。
 避難中、防災行政無線が3分おきに流れ、母は「まるで空襲警報だ」と漏らした。実家は帰還困難区域にある。戻れない母の口癖は「原発が憎い」だ。
 高橋さんは「地区の人たちが、母や浪江のことを気に掛けてくれる。温かみがありがたい」と感謝する。
 ささやかな日常の貴さや地域の絆。原発事故後、住民たちはあらためてかみしめている。


2018年01月31日水曜日


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