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<東北の本棚>災厄にどう向き合うか

オオカミのお札(一)カヨが聞いた声 おおぎやなぎちか 著 中川学 絵

 東京都青梅市の御岳山(みたけさん)にはオオカミを守り神とする信仰が残る。秋田市出身の児童文学作家がオオカミ信仰をベースとし、疫病に見舞われた人々の生きざまを小説にした。
 幕末、山の近くに住む娘カヨは顔立ちに悩み、美しい妹と比べられることを嫌った。村で疱瘡(ほうそう)(天然痘)が流行し、家族で妹だけが発病してしまう。
 治療法がない病は死を意味した。カヨは裏山のほこらに向かい、大神さまに回復を祈る。妹は奇跡的に助かるが、カヨは「妹の顔にあばたが残っても構わない」と考えてしまった自分を責める。
 理不尽な災いとどう向き合うか。信仰は救いになるのか。そもそも人間の生い立ちは不公平にできているのか。本書は学問を教えてくれる優しい師匠、生きることに精いっぱいの「おとっつあん」や「おっかさん」との関係を交え、多くの問いを投げ掛ける。
 葛藤を抱くのは自分だけではない。誰もが悩み苦しんでいることが次第に明かされる。カヨが生きがいを見いだし、人生を全うする姿に救いがある。
 太平洋戦争と東日本大震災をテーマとする「オオカミのお札シリーズ」。第2、3巻も出版された。各巻とも懐かしさと温かみのあるイラストを添える。
 くもん出版03(6836)0301=1080円。


2018年02月04日日曜日


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