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<平昌五輪>モーグル遠藤と二人三脚、最後の滑り見届ける 名取の所属先社長中村さん

男子モーグル決勝1回目の得点を確認し、雄たけびを上げる遠藤選手=平昌
男子モーグルの会場で遠藤選手に声援を送る中村さん=12日、平昌(写真部・川村公俊撮影)

 平昌冬季五輪第4日の12日に行われたフリースタイルスキー男子モーグルで、最後の五輪に挑んだ遠藤尚選手(27)は決勝1回目を首位で通過したものの、2回目で転倒して敗退、目標のメダル獲得はならなかった。二人三脚で歩んできた所属先の忍建設(名取市)社長、中村忍さん(50)は観客席の最前列で滑りを見守った。
 凍えるような寒さの中、代名詞のエアを目に焼き付けた。転倒後、肩を落としてコースを降りてきた遠藤選手に拍手を送った。
 中村さん自身がモーグルの選手で、遠藤選手のことは子どもの頃から見てきた。「スキーをしながら働かせてほしい」。そう直訴してきた遠藤選手を入社させて9年。いつも本音でぶつかり合ってきた。
 自宅に呼んだのは昨季終了後のことだ。テーブルを挟んで向き合って言った。「お前、本気でやっていないだろ」
 「俺のことですか」。遠藤選手は気色ばんだが、すぐに認めた。
 初出場のバンクーバーは7位と躍進。ソチはメダルを期待されながら15位。良い時も悪い時も中村さんは、ずっと遠藤選手に寄り添っていた。だからこそ、気持ちも手に取るように分かる。
 不振が続いた昨季、中村さんの目には、遠藤選手が競技から逃げていると映っていた。「言わなければ互いに後悔する」。五輪シーズンを迎える前に、気持ちを奮い立たせたかった。
 地方の型枠工事会社に、潤沢な資金があるわけではない。その中で、給料名目の活動資金を工面し続けた。夏場の練習場所として私財を投じてウオータージャンプ場を整備。自宅に住まわせていた時期もあった。
 それでも中村さんには、まだ悔いがある。「ジムを造ってやりたかった。この業界は山あり谷あり。資金面でいろんな話が聞こえるのも重圧になっただろう」とおもんぱかる。
 27歳の遠藤選手に現役続行を勧める声もある。でも、中村さんは限界を悟っている。「ぼろぼろになる尚を見たくない。もう潮時。お疲れさまと言いたい」
 所属先の社長と選手という以上の関係があった。遠藤選手は「互いにうそを言わずに話し合えてきた。所属先の社長である前に、人として接してくれた」と感謝した。(平昌=佐藤夏樹)


2018年02月13日火曜日


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