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おひなさま2000体の人形供養 東日本大震災、亡き人への思い…それぞれの感謝つづる

供養を待つひな人形
全国から持ち込まれ、供養を待つひな人形

 仙台市青葉区の成田山仙台分院で2000体のひな人形が供養の時を待っている。人形を手放す理由は世相を映す。住宅事情の変化、東日本大震災、生前の身辺整理…。3月3日は桃の節句。持ち主の手紙には思い出深い人形との別れ、家族への思い、さまざまな人間模様がつづられている。

 「娘が誕生した時に、亡き父に購入してもらった大切なおひなさまです。現在狭いアパート暮らしで、この5年半の間、一度も飾ることができませんでした」

 高度経済成長期に流行した七段飾り。住まいの狭さから人形を手放す人は多い。三人官女や五人ばやしだけを処分する人もいる。

 「七段飾りを飾る元気もなく人形供養に出すことにしました。お内裏さまとおひなさまは玄関に飾り、娘たちも喜んでくれました」

 震災後は供養の依頼が1.5倍に増えた。

 「津波で全壊したわが家ですが、奇跡的にひな人形は無事でした。泥まみれでしたが、2人の娘を守ってくれたかのようでした」
 「自宅が地滑りのため災害危険区域に指定され、集団移転の対象になりました。引っ越しのため、ひな人形は持って行けません」

 震災から7年。「被災びな」に代わって目立つのが、生前に身辺を整理する「終活びな」だ。

 「嫁いで初めておひなさまを飾ったとき、主人が『よく来てくださいました』と(言い)、一緒にうれし涙を流したのを思い出します。昨年、主人を亡くし、大阪に帰ることにしたので、おひなさまを手放します」

 母親が認知症になった。実家の大掃除を始めた女性は、人形の日に焼けた服や、しみの出た顔を見て、過ぎた年月に思いをはせる。

 「時間の流れは緩やかだけれど着実に、不可逆的に、ただ黙々と音も立てずに、全てのものに平等に注ぐものなのだと感じました」 

 娘の成長、人生の喜び、悲しみを見守ったひな人形は静かに役目を終える。

 「娘の初節句に両親がプレゼントしてくれました。3人の子どもに恵まれましたが、離婚、乳がんを経験し波瀾(はらん)万丈の歳月でした。孫にも巡り合え、老後が目の前に迫っています。こんな私を支えてくれたおひなさまに心より感謝します」        

 国分玲樹(れいじゅ)住職(41)は「人形をただ処分するのではない。感謝や思い出も合わせて供養するという根底は、時代が移ろいでも変わらない」と話した。

[メ モ]成田山は全国から人形や縫いぐるみの供養を受け付ける。ひな人形だけで年間約300体をおたき上げする。「順番待ち」の2000体を手紙と合わせ、2〜3月に公開する。展示は3月11日まで。午前10時〜午後5時。見学無料。火、水曜は休み。


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2018年03月01日木曜日


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