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<あなたと共に>「よそ者」が見た復興(3)東京→石巻市 かっこいい漁業伝える

「石巻に関わった7年間、切れ目なくずっと楽しかった」と語る安達さん=石巻市

◎「フィッシャーマン・ジャパン」アートディレクター 安達日向子さん(27)

 石巻市の石巻魚市場の一室で2月上旬、東北の若手漁師らでつくる一般社団法人「フィッシャーマン・ジャパン」(FJ)をPRする企画の撮影があった。若手漁師や水産仲卸業者らがカメラマンの求めに応じて次々とポーズを決める。
 「かっこいい」。FJのアートディレクターを務める安達日向子さん(27)が熱いまなざしを向け、つぶやいた。

<居場所見つける>
 東日本大震災の発生当時、武蔵野美大(東京)2年でグラフィックデザインを学んでいた。震災から約2カ月後、親戚が暮らす石巻市を訪問。足しげく通ううち、津波で失った思い出の品を絵に描いて被災者に贈ったり、依頼を受けて市内のバーの壁面に絵を描いたりした。
 「あの絵を描いた子」。そう呼ばれると、石巻に自分の居場所ができたような気がした。
 大学卒業後は都内を拠点に、フリーランスで広告などのデザインを手掛けた。でも、何かが違う。不特定多数の受け手に発信する仕事に手応えを感じられずにいた時、思い起こしたのが石巻で過ごした日々だ。
 作品をきっかけに人とつながる。新たなつながりは町や人を大胆に変えていく。そんな様子を目の当たりにした。「もの作りをする者にとってあんなに幸せな環境はない」。約半年で都内での仕事を切り上げ、石巻に拠点を移すと決めた。
 FJとの出合いは2015年。漁師に誘われ、初めて漁船に乗った日のことを鮮明に覚えている。朝日に輝く水面(みなも)、潮風の匂い、黙々と沖を目指す漁師の背中…。「こんなにかっこいい世界があることを多くの人に知ってほしい。漁師に、漁業に、ほれちゃった」。胸の高鳴りに任せて、人生のかじを切った。

<後継者育成に汗>
 被災してもなお、力強く前進し続ける漁師らと手を携え、彼らの魅力を伝える方法に日々、思いを巡らす。漁業の世界を一般の若者に知ってほしいと、希望者に漁師がモーニングコールをするサービス「フィッシャーマンコール」を手掛けるなどしてきた。
 あの日から間もなく7年。14年に発足したFJは水産業のイメージ刷新を図り、担い手の育成や販路開拓に汗を流してきた。
 「石巻を起点に、全国の水産業が抱える問題に挑みたい。未来をもっと良くしたい」。復興の先を見据えながら、あふれんばかりの「漁業愛」をデザインに込める。(石巻総局・関根梢)

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災地では今も、国内外から訪れた多くの支援者が活動する。地域に根付き、息長くサポートするうちに移住を決めた人も少なくない。地道に復興を支えながら、「よそ者」の視点で地域の隠れた魅力や可能性を引き出すこともある。彼らの思いに迫る。


2018年03月03日土曜日


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