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<回顧3.11焦点>三陸鉄道、被害甚大 復旧に180億円、地域の足としての役割取り戻せるか

津波で線路ごと折れた三陸鉄道南リアス線の荒川橋りょう=2011年5月30日、岩手県釜石市唐丹町

 岩手県沿岸部を走る第三セクター三陸鉄道は、東日本大震災で線路などに甚大な被害を受けた。特に大船渡、釜石両市を結ぶ南リアス線はいまだに運休が続き、復旧のめどが立たない。赤字路線で経営基盤も弱く、再建には国の支援が不可欠だが、復旧へ向けた具体的な道筋は示されていない。「地域の足」としての役割を取り戻せるのか。27年前に全国で初めて開業した三セク路線は、岐路に立たされている。(坂井直人、遠藤正秀、山口達也)

 南リアス線の吉浜(大船渡市)―唐丹(釜石市)間、唐丹湾から約1キロの荒川橋りょう(釜石市)。海抜十数メートルにあり、高さ約5メートル、長さ約66メートルの鉄筋コンクリート製の橋桁は半分近くが津波で流され、無残な姿をさらしている。
 「まさか、ここまで到達するとは」。被害確認のため5月30日、現地を訪れた三鉄の吉田哲南リアス線運行部部長心得(47)はため息をついた。「構造上、強い橋だった。当時、列車が走っていなかっただけでも幸いだった」
 地震発生時、1両編成の釜石行き下り列車が、荒川橋りょうから南に約1.5キロの鍬台トンネル(釜石市)を走行していた。列車はトンネル内で緊急停車し、乗務員と乗客2人の計3人は逃げて無事だった。
 三鉄によると、全線復旧には最大で約180億円かかると見込まれる。従来の国の基準では、補助は4分の1しか出ない。同社は「会社と県、地元だけで135億円を負担するのは不可能だ」と危機感を募らせる。
 中でも南リアス線の復旧は、難航が予想されている。北・南リアス両線の被害箇所は計317カ所、うち南リアス線は247カ所を占める。
 移転が検討されている駅もある。陸前赤崎駅(大船渡市)周辺は住宅の大半が津波で流されるなどしており、従来のように住宅を建てるのは難しい。三鉄は「現在の場所のままでは乗客にとって不便。費用はかさむが、移転するしかない」として大船渡市と協議を進めている。
 2009年度まで16年連続の赤字決算を重ねる三鉄にとって、救いは沿線自治体の支援の声だ。大船渡市商工観光部の佐藤悦郎部長は「高校生の通学や高齢者の利用など三鉄は必要。復旧費がどれだけかかるか分からないが、一定の負担は覚悟している」と強調する。
 三鉄の望月正彦社長は「復旧には国の支援が不可欠。復興のシンボルとして三鉄復旧の意義は大きいはずで、その点を沿線自治体とともに訴えていきたい」と話している。

[三陸鉄道]旧国鉄から線路と車両を引き継ぎ、1984年に全国初の第三セクターとして開業。宮古―久慈間の北リアス線(71キロ)と盛(大船渡市)―釜石間の南リアス線(36.6キロ)から成る。開業時268万人超だった年間乗降客は年々減少、2008年度に初めて100万人を割った。09年度は北リアス線が65万7000人、南リアス線は23万8000人。本社は盛岡市。南北のリアス線を結ぶJR山田線釜石―宮古間も津波被害で運休し、復旧の見通しは立っていない。=2011年6月21日河北新報
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 東日本大震災の直後から、被災地で暮らす市民の課題を取り上げた河北新報連載「焦点」。震災7年の節目に、発生翌年までの主な記事をまとめました。
=肩書や年齢は掲載当時のものです。=


2018年03月03日土曜日


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