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<回顧3.11焦点>被災マンション、住民の意志で迅速に解体へ「二次災害を防ぐことが優先」

解体が決まった「サニーハイツ高砂」。建物が傾き、二つの棟の間隔が上に行くほど広がっている=仙台市宮城野区福室

 東日本大震災で被災した仙台市宮城野区のマンション「サニーハイツ高砂」(14階、189戸)の管理組合(2011年7月31日解散)は、震災からわずか1カ月半で解体に向けた全所有者の同意を取り付けた。「二次災害を防ぐことが優先」という住民の意思が、迅速な決断につながった。
 サニーハイツは柱に亀裂が走り、崩れた外壁から鉄筋がむき出しになっている。L字型に並ぶ2棟を少し離れた場所から見ると、両棟の間隔が上層階に向かうほど広がっている。紛れもなく建物は傾いている。
 震災後、約400人の住民は1階の集会所や、近くの小学校などで避難生活を送った。「ついのすみかと考えていた人も多いが、自然の力には勝てなかった」。管理組合理事長だった伊藤宗昭さん(66)は残念がる。
 建物は1976年の完成で築35年。78年の宮城県沖地震で基礎部分を支えるくいの一部に損傷を受け、補修した。
 今回の震災で、市の応急危険度判定は当初、「要注意」だった。度重なる余震で4月4日に「危険」に繰り上がり、損保会社の地震保険の鑑定も「半損」から「全損」となった。
 入居者有志13人が3月末、地震災害対策委員会を設立し、管理組合役員と協議を始めた。組合は地震学の専門家から助言を受け、状況把握に努めた。
 建て替えか、解体か、修繕か。管理組合は4月29日、方向性を決めるための臨時総会を開き、三つの試算を提示した。
 (1)建て替え費用は約30億7000万円、1戸当たり約1600万円の負担で、調査から工事完了まで3年かかる(2)解体は約2億5000万〜3億円で、工期は8〜9カ月となる(3)修繕には地盤改良も必要で費用の見当がつかない―。1時間ほどの協議を経て、採決の結果、全員が解体に手を挙げた。
 建物の解体・撤去を公費で賄う制度が5月中旬にできたことも、結果的に追い風になった。組合は同意書を集め、6月下旬に市に関係書類を提出した。
 伊藤さんは「所有者それぞれに思いがあり、全員同意は難しいと考えていた。協力を得られたことに感謝する」と話す。
 災害対策委の事務局を務めた志賀勇次さん(57)は「話し合いを重ねるうち、二次災害を防ぐのが先決という共通認識ができた」と振り返る。
 現時点では秋に解体に着手する予定で、来春には更地になる見通しだ。仮設住宅などに移り住んだ住民の中には再建を模索する動きもあるが、約3500平方メートルの土地の活用策は決まっていないという。=2011年8月6日河北新報
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 東日本大震災の直後から、被災地で暮らす市民の課題を取り上げた河北新報連載「焦点」。震災7年の節目に、発生翌年までの主な記事をまとめました。
=肩書や年齢は掲載当時のものです。=


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2018年03月04日日曜日


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